文字式の学習が終わり、中学数学の最初の山を乗り越えて少し安心していませんか?
ここまで学習してきた文字式の計算は数学の入り口といっても過言ではなく、ここから文字式の知識を中心に活用した新しい学びが始まっていきます。
このページで今回学習をしていくのは、2つの数の関係性に注目する「比例」という内容です。
比例は文字式の学習を応用した分野の1つです。
そして、この比例関係をしっかりと理解していかなければ、この先で学習する内容の理解も非常に難しくなっていきます。
なので、このページでは比例関係の基本をしっかりと押さえて解説していきます。
「比例」を学ぶ意義は?
比例関係について解説していく前に、まずは比例を学ぶ意義についてお話しておきます。
数学の学習の中でも「比例」は、これから学習する関数やグラフの理解の入り口となる重要な単元です。
比例はただ式を覚えるだけでなく、2つの数の関係性を読み取り、グラフの特徴を理解という一連の思考力を身につけるために必要な基礎です。
特に「比例のグラフ」や「比例の傾きの求め方」は、中学2年生以降の数学(一次関数や反比例)を学ぶうえでも繰り返し登場します。
さらに、以下のような日常的な場面にも比例は関係しています。
- 商品の単価計算(価格と量)
- 地図の読み取り(縮尺と実距離)
- 料理のレシピの分量調整
- 時間と距離の関係(速さ)
つまり、「比例の関係」が理解できるということは、数学の重要な基礎知識と現実社会での応用を知る第一歩なのです。
比例とは?:2つの量の変化に注目しよう
比例を学ぶ意義について説明したところで、まずは「比例」の定義について正しく理解しましょう。
比例とはどんな関係か?
比例とは、一方の量が変化すると、もう一方の量も一定の割合で変化する関係のことをいいます。
もっとやさしく言えば、「片方が2倍になったら、もう片方も2倍になる」「片方が3分の1になったら、もう片方も3分の1になる」といった、両方の変化が連動している関係です。
具体例で比例をイメージしよう
文章での説明だと分かりにくい人もいると思うので、実際に比例関係の例を見ていきましょう。
例1:時速60kmで走る車
- 1時間 → 60km
- 2時間 → 120km
- 3時間 → 180km
このように、時間が2倍・3倍になると、距離も2倍・3倍になる関係になっています。
これは時間と距離が比例の関係にあるといえます。
例2:料理の分量
- 2人分の材料 → 醤油20ml
- 4人分にしたい場合 → 醤油40ml
こちらも、「人数が2倍 → 材料が2倍」という比例の関係です。
比例の数式表現:y = axの形を覚えよう
比例関係という関係がどういった関係であるかイメージできたところで、この関係を表す数式の形を見ていきます。
比例を数式で表すとどうなる?
比例の関係を数式で表すと、次のような形になります。
$y = ax$
ここでの意味は以下の通りです。
文字 | 意味 |
---|---|
$x$ | 独立変数(変化させる量) |
$y$ | 従属変数($x$によって変化する量) |
$a$ | 比例定数(変化の割合) |
ここで説明した文字はしっかりと覚えるようにしてください。
「比例定数」とは?
上記で説明した文字の中で「比例定数」と言葉が出てきましたが、この言葉は比例の学習をしていくうえで非常に重要な言葉になるので、より詳しく見ていきます。
この$a$の部分は、$x$が1のときに$y$がいくつになるか、つまりどれだけの割合で変化しているかを表す重要な数です。
例えば、$y=3x$ の場合は「$x$が1のときに$y$が3になる」、つまり「$y$は$x$の3倍になる関係」を表しています。
正の比例関係と負の比例関係の違い
上述した比例定数は$y$が$x$と比べてどれくらいの変化を表すかということに付随して、$x$と$y$が正の比例関係なのか、負の比例関係なのかを表すための数でもあります。
具体的には、比例の式$y=ax$において、比例定数$a$の符号がグラフの形に大きく影響を与えます。
正の比例関係とは?
まず比例定数$a$が正の数のときを見ていきます。
比例定数$a$が正の数のとき、$x$が大きくなると$y$も大きくなります。
これは、右上がりの直線としてグラフに表されます。
- 例:$y=2x$、$y=0.5x$
- グラフは原点(0,0)を通り、右上へと伸びる
負の比例関係とは?
続いて比例定数$a$が負の数のときを見ていきます。
比例定数$a$が負の数のとき、$x$が大きくなると$y$は小さくなります。
これは、右下がりの直線になります。
- 例:$y=-3x$、$y=-0.5x$
- グラフは原点を通り、右に行くほど下がる形になる
このように、比例定数の符号によってグラフの向きが決まるというのは、とても大切なポイントです。
比例のグラフの特徴を理解しよう
上記で比例定数によって、グラフの傾きが変わることをお話しました。
これ以外にも比例のグラフには、他にもいくつかの特徴があります。
下記で見ていきましょう。
特徴1:グラフは原点(0,0)を通る
比例の関係では、$x=0$のとき$y=0$です。
つまり、グラフは必ず原点を通ります。
例:$y=3x$
→$x=0$のとき、$y=0$
→グラフは(0,0)を通る直線になる
特徴2:グラフは直線になる
比例の関係をグラフにすると、一直線になります。
$y$は$x$に比例するため、$x$が増えるにつれて$y$も一定の割合で増えるからです。
特徴3:傾きが比例定数になる
グラフの傾きは「比例定数$a$」そのものです。
この傾きは、グラフがどれだけ急か・緩やかかを示す数値になります。
比例グラフの描き方:手順を覚えよう
ここまでで数式に見る比例の特徴を見てきました。
これらを踏まえて、比例の式をもとにグラフを描くには、次のステップに従います。
ステップ1:軸を用意する
まずは、$x$軸(横軸)と$y$軸(縦軸)を引きます。
これはグラフの土台になります。
ステップ2:原点(0,0)をプロット
比例のグラフは必ず原点を通るため、ここに点を打ちましょう。
ステップ3:いくつかのxに対応するyを求める
たとえば、$y=2x$なら、
$x$ | $y=2x$ |
---|---|
-2 | -4 |
-1 | -2 |
0 | 0 |
1 | 2 |
2 | 4 |
このように、いくつかの点を求めてグラフに点を打ちます。
ステップ4:点をまっすぐ結ぶ
点と点を直線で結べば、比例のグラフの完成です。
比例のグラフからわかることとは?
グラフは比例の関係にある2つの数の意味を見ることができるようになります。
グラフを使うことで、式からは読み取りにくいことも視覚的に理解しやすくなります。
たとえば、下記のようなことが分かりやすくなります。
1.傾き(比例定数)が視覚化される
- 急な傾き → $a$の値が大きい
例:$y=5x$ - 緩やかな傾き → $a$の値が小さい
例:$y=0.5x$
2. aが負のときは右下がり
- $y=-2x$ → 右に進むほど下がっていく
- $a$が負だと「増えると減る」逆の関係
比例のグラフを確認しよう
ここまでの内容を踏まえて、実際に比例のグラフを確認してみましょう。
この2つのグラフは緑のグラフが$y=2x$で青のグラフが$y=\frac{1}{2}x$のグラフになります。
この2つのグラフを比べると、比例定数$a$の大きさによって、グラフの傾きが変わることも分かります。
また、どちらのグラフも原点を通過していることも分かります。
一方で、この2つのグラフは、緑のグラフが$y=2x$のグラフで、赤のグラフが$y=-2x$のグラフです。
比例定数が負の数の場合、赤のグラフのように右肩下がりのグラフになっていることも確認できました。
比例定数(傾き)の求め方:グラフや表から見つけ出す力をつけよう
ここまでは比例定数$a$は「$x$が1のときの$y$の値」であると説明しました。
このことを押さえて、ここからは与えられたデータから比例定数(傾き)を正確に求める方法を詳しく解説します。
方法①:式から比例定数を読み取る
早速1つ目の方法、式から比例定数を読み取る方法から見ていきます。
この方法はもっとも簡単なパターンです。
式がすでに$y=ax$の形で与えられていれば、$a$がそのまま比例定数です。
例:$y=3x$ → 比例定数は3
例:$y=-0.5x$ → 比例定数は-0.5
方法②:数の組み合わせから求める
2つ目の方法は数の組み合わせから求めていく方法です。
式がないときでも、$x$と$y$の対応する値(座標や表)が与えられていれば、比例定数を計算できます。
計算方法は下記のとおりです。
比例定数$a=\frac{yの値}{xの値}$(※$x \neq 0$のとき)
例題
ある比例の式は、$x=4$のとき、$y=12$である。この時の比例定数$a$の値を求めなさい。
$a=\frac{12}{4}=3$
このときの比例の式は $y = 3x$
それが「比例の関係」である根拠にもなります。
方法③:グラフから比例定数を求める
3つ目の方法はグラフから読み取る方法です。
グラフに描かれた直線から比例定数を求める場合、原点ともう1点の座標を読み取りましょう。
手順
- グラフから明確に交点を確認できる点を選ぶ
→ 例えば (2, 6) - 原点(0,0)とこの点を使い、$a=\frac{y}{x}$ で計算
例:点(2, 6)の場合 → $a=\frac{6}{2}=3$
比例の式は $y=3x$
方法④:変化量から求める(傾きの定義)
4つ目の方法は少し進んだ方法ですが、関数の世界でとても重要です。
2点 $(x_1, y_1)$、$(x_2, y_2)$ がわかっている場合
傾き(比例定数)$a=\frac{y_2 – y_1}{x_2 – x_1}$
例:
点A(1, 2)、点B(3, 6)があるとすると
- $a=\frac{6-2}{3-1}=\frac{4}{2}=2$
- 式は $y=2x$
問題の状況に合わせて、この4つの方法から、どの方法で求められるかを都度考えて求めるようにしていけるようにしましょう。
比例グラフから何が読み取れるのか?
ここまでの説明はグラフに関する話を中心に行ってきましたが、比例のグラフは実に多くの情報を表しています。
比例のグラフは単に「直線」であるだけでなく、さまざまな情報を読み取ることができます。
実際にどのようなことが読み取れるのか見ていきます。
①:xとyの対応関係
グラフ上の任意の点を調べると、その$x$の値に対応する$y$の値がわかります。
例えば、比例式 $y=4x$ のグラフ上で、$x=2.5$ のときの$y$の値を知りたければ、グラフをたどって$y=10$と判断できます。
②:比例定数の大小比較
複数の比例グラフがあるとき、それぞれの傾きの違い(=比例定数の違い)から関係の強さを比較できます。
- 傾きが大きい → $y$が急激に増える
- 傾きが小さい → $y$の増え方がゆるやか
例:
- $y=5x$(急な上昇)
- $y=0.5x$(緩やかな上昇)
③:グラフの向きで関係の種類がわかる
グラフの特徴でもあった、グラフが右肩上がりなのか右肩下がりなのかで、2つの数の関係も分かってきます。
- 右上がり(正の比例関係) → $a > 0$
- 右下がり(負の比例関係) → $a < 0$
例題:
ある商品の販売価格$x$と、利益$y$の関係が$y=-2x$で表されているとしたら、「価格が上がると利益が減る」関係と読み取れる(負の比例関係)
実生活にひそむ「比例」の例
これまでの説明は、数学の勉強における比例のお話でしたが、比例の考え方は、現実のいろいろな場面でも使われています。
ここからは日常生活で使われている比例を見ていきましょう。
例1:買い物と料金
1つ目の例は、買い物とその料金についてです。
単価が一定の商品を複数買うと、支払い金額は「比例」になります。
- 1個100円のりんご → 5個なら500円($y=100x$)
例2:時速と移動距離
2つ目の例は、時速と移動距離に関する例です。
移動速度が一定のとき、「時間」と「距離」は比例の関係です。
- 時速60kmで走行 → 2時間で120km($y=60x$)
例3:料理の分量と人数
3つ目は料理の中の具材の量と人数に関する例です。
この例がおそらく最も身近かと思います。
- 2人分:材料A=50g
- 4人分にしたい → 材料A=100g($y=25x$)
例4:コピー機の印刷時間
4つ目の例は事務作業における例です。
例えば、1枚あたりの印刷時間が一定なら、かかる時間も比例関係になります。
- 1枚に10秒 → 6枚で60秒($y=10x$)
比例を使った文章題の解き方
比例の知識をしっかり身につけたら、いよいよ応用問題にも挑戦してみましょう。
文章題では、問題文の中に隠れている「比例の情報」を見抜くのがカギです。
基本の手順
文章問題を解いていく前に、文章問題を解く基本的な手順を示しておきます。
この手順に沿って考えていくと、ミスを減らすことができます。
- 何が比例関係かを見抜く
- 比例定数を求める
- 式を立てて、必要な情報を求める
例題1:単価と金額
商品1個が240円です。$x$個買うときの金額$y$円を求める式を立てましょう。
→ 解答手順
この問題の解答の手順は下記のとおりです。
- 単価が一定 → 比例関係
- 比例定数$a=240$
- 式は $y=240x$
例題2:速さと時間と距離
自転車で時速15kmで移動しています。$x$時間で進む距離$y$kmを求める式は?
→ 解答手順
この問題の解答の手順は下記のとおりです。
- 時速が一定 → 比例関係
- $a=15$
- 式:$y=15x$
例題3:比例の式から逆算する問題
$y=5x$ のとき、$y=35$ のときの$x$の値を求めよ。
→ 解答手順
この問題の解答の手順は下記のとおりです。
- 式に代入して解く:$35=5x$
- $x=7$
これらの問題のように、文章題は「何と何が比例か?」を最初に判断するのが最重要です。
グラフを活用して問題を解こう
比例のグラフは、式だけでなく視覚的に関係を理解するのに最適なツールでした。
ここでは、グラフを使った応用問題の解き方を紹介します。
問題例:グラフから式を立てる
原点と点(2, 8)を通る比例のグラフがあります。式を求めなさい。
この問題の解答の手順は下記のとおりです。
- $a=\frac{8}{2}=4$
- 式は $y=4x$
効率よく比例を学ぶための勉強法
ここまで見てきたように、比例の問題は覚えることも多く、勉強が大変な分野であります。
ですが、比例の学習では、ただ覚えるのではなく、「関係性を見抜く力」を育てることが重要です。
そこで、以下のような学習法を試してみましょう。
勉強法①:表・式・グラフをセットで学ぶ
比例の関係を、表・式・グラフの3つで同時に扱う練習をすると理解が深まります。
- 表 → 値の対応を理解
- 式 → 関係性を数式で表現
- グラフ → 視覚的な変化を実感
このようにセットで学習することでそれぞれの意味を正確に把握できるようになっていきます。
勉強法②:日常の「比例」を探す
また、教科書だけでなく、日常の中に比例がどこにあるかを探してみましょう。
たとえば下記のような例はおすすめです。
- スーパーの「グラムと値段」
- 距離と料金の関係(タクシー、電車)
- スマホのデータ使用量と通信料金
勉強法③:一度ミスした問題を「解き直しノート」にまとめる
比例の単元に限った話ではありませんが、ミスした問題は必ず「なぜ間違えたか」を書いて復習しましょう。
「式を立て忘れた」「比例でないのに比例だと思った」など、原因が見えてきます。
まとめ
このページでは比例の基本形や比例定数の計算方法、グラフの特徴など、比例についての基本を解説していきました。
比例は、冒頭でもお話しましたが、これから学習していく関数やデータ分析、さらには物理・経済・科学など、あらゆる分野の基本になります。
中学校だけで終わる知識ではなく、「一生使う基礎知識」だといっても過言ではありません。
改めてこのページ解説したことを振り返っておきます。
- 比例とは「$x$の増加に対して$y$が一定の割合で変化する関係」
- 式:$y=ax$、グラフは原点を通る直線
- 比例定数(傾き)は数値やグラフから求められる
- グラフからは値の読み取りや傾きの比較もできる
- 日常生活にも比例は多く存在する
数学の学習は、基礎的な概念を積み重ねていくことで知識が少しずつ増えてきます。
比例の概念を十分に理解し、自信を持って活用できるようになれば、この先のより複雑な数学の知識の習得にもつながります。
日々の学習を通じて、数学の面白さと有用性を実感していきましょう。
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