中学の数学では、普段生活の中で数えることができる数以外にも、ちょっと意識しないと考えることのない数まで勉強をしていきます。
その中でも、中学1年生ではまず「正の数・負の数」について勉強をしていきます。
これらの数がどんな数なのかはこのページでしっかりと解説していきますが、私たちの生活の中には、意識せずに正の数や負の数が使われている場面がたくさんあります。
たとえば、気温や銀行の残高、スポーツの得点差、ゲームのスコアなど、普段よく目にする数の中にも「マイナス」や「プラス」が隠れています。
この記事では、正の数・負の数がどういった数なのか、私たちの生活にどれほど正の数・負の数が活かされているのかを詳しく紹介します。
このページの内容を理解していくことで、「なぜ正の数・負の数を学ぶのか」「数学がどのように生活に関係しているのか」の理解が深まっていくと思います。
正の数・負の数の基本をしっかりおさえよう
まずは、正の数・負の数の基本を押さえていきましょう。
それぞれの数については下記のように定義されています。
また、「0」についてもどういった立ち位置になるのか、この段階でしっかりと押さえておきましょう。
- 正の数……0より大きい数。例:+3、+100、+0.5
- 負の数……0より小さい数。例:−5、−200、−0.1
- 0……正でも負でもない「中立」の数
この「0」を中心にして、正の方向(増える・上がる)と負の方向(減る・下がる)を考えることで、身の回りのさまざまな変化をわかりやすく数値化することができます。
正の数・負の数は、単に「大きさ」を示すだけでなく、「どちらの方向に変化したか」をはっきりと示す重要な数です。
実生活における正の数・負の数の具体例
正の数・負の数について定義を押さえたところで、実際に身の回りで使われている正の数・負の数の例を見ていきたいと思います。
気温で見えるマイナスとプラスの世界
1つ目はもっとも身近な例として挙がることが多い、天気予報でよく見る「気温」です。
テレビやスマホの天気アプリで、「今日の最低気温は−2℃、最高気温は6℃」というような表示を見たことはありますよね?
これは、0℃を基準に、どれだけ気温が低いか・高いかを表しています。
たとえば、朝7時に−3℃、昼12時に5℃だった場合、気温は何℃上がったでしょう?
計算式にすると:
$5−(−3)=8$℃
つまり、8℃も気温が上がったということです。
このように、気温の変化を計算するには、「符号」に注目することがポイントです。
特に「マイナスの引き算」が出てくると、「−(−)」は実は「+」になるという計算のルールが現れます。
これは、正負の数を学ぶ中で最初につまずきやすい部分ですが、実生活と結びつけると理解しやすくなります。
このページを学習する段階では、まだこの点については十分に理解できていなくても問題ありませんが、正の数・負の数の計算では「符号」について意識して計算することが重要になっていくということは頭に止めておいてください。
標高と深さにも使われている
次に示す例は、地図などにも使われる「標高・海抜」の例です。
地理の学習や登山のニュースなどでよく出てくる「標高・海抜」も、正の数・負の数が使われています。
例えば、下記のようなものが挙げられます。
- 富士山の頂上の標高:3,776m(海面より高い)
- 地下鉄のホーム:−10m(地面より低い)
- 海の最も深い場所「マリアナ海溝」:−10,911m(海面より深い)
このように、海面よりも「上にあるもの」はプラス、「下にあるもの」はマイナスで表されます。
たとえば、ある人が標高−30mの地下の倉庫から標高450mの山の中腹まで移動したとすると、高低差は
$450−(−30)=480$m
つまり、実際の移動距離は480メートルになります。
このように、地面を「0」として、上か下かで符号をつけることで、位置関係を明確に表すことができるのです。
お金の管理にも正の数・負の数が活躍
そして3つ目の例は、生活を送るうえで欠かせない、お金に関する例です。
特に、お金の出入りを管理する場面では、正の数・負の数は重要な働きをしています。
たとえば、家計簿や銀行の残高の計算では次のように表現します。
- 給与収入:300,000円
- 電気代:−7,000円
- スマホ代:−4,000円
- 食費:−25,000円
合計すると、
$300000−7000−4000−25000=264000$
つまり、残高は264,000円になります。
このように、「入ってくるお金はプラス」「出ていくお金はマイナス」で表すことで、金銭の増減がとてもわかりやすくなります。
また、赤字・黒字を判定する時にも役立ちます。
赤字のときは、残高が「マイナス」になっているという意味です。
これは、家庭だけでなく、会社の決算や経済ニュースなどでも同じように使われています。
スポーツの得点差も正の数・負の数で整理できる
4つ目の例は、スポーツにおける例です。
特に、スポーツの試合結果を整理するときに、正の数・負の数は便利です。
たとえば、バスケットボールの試合で、A中学校がB中学校に75対70で勝った場合
得点差は5点
逆に、次の試合で70対80で負けたら
得点差は−10点
このように、「勝ったときはプラス」「負けたときはマイナス」で記録すれば、チームの調子を数字で簡単に把握できます。
また、前回の試合より得点が増えたか減ったかも、正の数・負の数で表せます。
前回:68点 → 今回:75点 → +7点増
前回:82点 → 今回:74点 → −8点減
このように、数の増減を整理するのに正の数・負の数がとても役立つのです。
正の数・負の数の学習のコツ
ここまで実生活における正の数・負の数の具体例を示してきました。
正の数・負の数の勉強はこれからどんどん進んでいきますが、勉強を進めていく前に、正の数・負の数の勉強内容の理解を確実に進めていけるような勉強のコツを紹介しておきたいと思います。
特に、上述もしましたが、正の数・負の数の計算問題では、「符号」を意識することがポイントになります。
このことが勉強のコツにどうつながっていくのかを考えながらこのパートを読み進めてみましょう。
日常生活の中で「変化」を意識しよう
正の数・負の数の勉強のコツは、普段の生活の中における「数の変化」を意識することになります。
正の数・負の数は、「変化」を表すときにとても便利です。
以下のような表現も、実は正負の考え方と深く関係しています。
- 体重が「2kg減った」→ −2kg
- 貯金が「1万円増えた」→ +10,000円
- 去年より成績が「5点下がった」→ −5点
つまり、「何かが増えた・減った」と感じたとき、それを数字で正しく表すには、正の数・負の数の知識が欠かせません。
また、「今年は去年より3日早く桜が咲いた」「先月より500人来場者が増えた」など、ニュースでも変化を扱う場面では、正の数・負の数の感覚が自然に使われています。
正の数・負の数の理解を深めるための学習法
では、実際の勉強方法ではどのような方法が正の数・負の数の勉強では有用なのでしょうか?
結論、中学生が正の数・負の数でつまずかないようにするためには、以下のような学習の工夫が効果的です。
① 図を使う
数直線を何度も描いたり、コインを使ってプラスとマイナスを表現したりすることで、抽象的な数のイメージがつかみやすくなります。
② 言葉にしてみる
「−5から−3引くってことは…2進むってこと?」など、頭の中の考えを声に出してみると、自分の理解の曖昧さに気づくことがあります。
③ 計算だけでなく、説明もしてみる
友だちや家族に「なぜこうなるのか」を説明してみることで、自分の理解を深めることができます。
説明できないことは、実はまだ分かっていないことも多いです。
④ 日常にある「正の数・負の数」を探してみる
「今日の気温差は?」「貯金がどれだけ増えた?」「スポーツの得点差は?」など、生活の中で正負の数を意識してみましょう。
身近なものと結びつけることで、知識が定着しやすくなります。
ゲームやSNSにも正負の数が使われている!
ひと昔前とは違い、今や中学生は勉強以外にも、様々なものに興味を持つようにと言われる時代になってきました。
その中でも勉強以外の部分で正の数・負の数に触れることができるものがあります。
それが、もしかしたら勉強よりも身近になっているかもしれない「ゲーム」や「SNS」です。
具体的にどのようにこれらに正の数・負の数が使われているかを見ていきます。
ゲームの例
- RPGで「HPが−20された」「攻撃力が+10上がった」
- シューティングゲームで「スコアが−100になった(ミス)」
上記のようなものがゲームの中で使われている正の数・負の数です。
言われてみれば…と気づいた人も少ないないのではないでしょうか?
SNSやアプリの例
- フォロワーが+50増えた/−10減った
- 訪問者数が前月比+12%
これらがSNSなどで使用されている例です。
「+」「−」の表示も、すべて正の数・負の数の考え方によるものです。
特にスマートフォンの通知やグラフの表示でも、赤い矢印(↓)や青い矢印(↑)などが使われて、「上昇」「下降」を視覚的に表している場合もあります。
つまり、現代のデジタル社会では、私たちが思っている以上に、正負の数が活用されているのです。
社会や将来の仕事でも活きる正の数・負の数の力
こういった正の数・負の数の勉強は、これからの将来のお仕事や今の社会ではどのように活かされているのでしょうか?
勉強内容や勉強の方法以外に、このようなことを考えてみると、勉強のモチベーションに繋がったりもするので、もし余力があれば積極的に考えてみることをおすすめします。
ここでは、いくつかの例を示していきたいと思います。
仕事の現場で役立つ「正の数・負の数」
まずは実際の仕事の中で使われている事例を紹介していきます。
正の数・負の数は、単に数学の問題を解くためだけの知識ではありません。
将来、社会に出てからの仕事の場面でも、多くの職業でこの考え方が活用されています。
たとえば、以下のような職業では、日常的に正の数・負の数の感覚が必要になります。
● 会計士・税理士
1つ目の例は、お金のプロである「会計士・税理士」の仕事です。
お金の「収入」はプラス、「支出」はマイナスとして処理されます。
決算書の作成では、売上や費用の増減、利益と損失などを正の数・負の数で記録し、企業の経営状態を表すことが求められます。
● 建築士・土木技師
2つ目の例は、建物や社会インフラを支える「建築士や土木技師」の例です。
建物の高さはプラス、地下の構造物の深さはマイナスで表します。
図面上で建物の各部分の位置を正確に設計するためには、正の数・負の数の知識が不可欠です。
● プログラマー・システムエンジニア
3つ目の例は、IT関連の「プログラマー」「システムエンジニア(SE)」の例です。
画面上の座標や、変化量を扱うプログラムでは、数値の増減を表すために正の数・負の数の概念が使われます。
例えば、キャラクターを右に動かすのは「+」、左は「−」など。
● 経済アナリスト・マーケティング担当者
4つ目の例は、中学生では少々イメージが難しい仕事ですが、「経済アナリスト」や「マーケティング」の仕事の例です。
売上の前年比やアクセス数の変化を、「+〇%」「−〇%」で表すことで、企業の戦略や商品の評価を定量的に分析します。
● 医療関係者(看護師・検査技師など)
最後の例は最も身近かもしれませんが、医療従事者の例です。
患者の体温や血圧、数値の「変化」を正確に記録することが重要です。
昨日より熱が−0.8℃下がった、血糖値が+15上がったなど、変化を正確に読み取る力が求められます。
このように、「変化」「比較」「増減」というキーワードを含む仕事では、正の数・負の数の理解がそのまま実務能力につながっているのです。
テクノロジーと正の数・負の数の関係
上記では、まず職業における正の数・負の数が使われている例を紹介しました。
続いて、身の回りにあるもので正の数・負の数が使われている例を紹介していきます。
いきなり具体例から入りますが、私たちの身の回りにあるスマートフォンや家電製品、交通システムなども、正の数・負の数の概念を土台とする「プログラム」で動いています。
たとえば、スマホの歩数計アプリでは、「昨日より+2,000歩多い」「前週比−1,200歩減った」といった数値を表示します。
このようなアプリは、データの変化を捉えて表示する際に、正の数・負の数の計算を内部で行っているのです。
また、車のカーナビや電車の運行システムでは、現在位置と目的地までの距離を「±」の数値で管理しています
位置情報も、東西南北を基準に正負で表すことで、地図上で正確なルート計算ができるのです。
AI(人工知能)や機械学習の世界でも、膨大な数の「データの増減」「傾向の変化」などを処理する際に、正の数・負の数を含む数式が活用されています。
データを扱うすべての技術の根底に、こうした数学的な考え方があるのです。
グラフ・表・統計にも正の数・負の数が
次に紹介するものは、中学生でも身近に感じるものです。
中学校でも学ぶ「グラフ」や「表」、「平均」や「差」などの統計的な考え方は、すべて正の数・負の数と深くつながっています。
これらは数学に限らず、様々な科目や学習において活かされているものだと思います。
たとえば、ある町の1週間の気温の変化をグラフで表すとします。
日付 | 気温(℃) | 前日比(℃) |
---|---|---|
月 | −2 | – |
火 | 1 | +3 |
水 | −1 | −2 |
木 | 3 | +4 |
金 | −2 | −5 |
この表から、「どの日に急激に気温が変わったか」「全体として暖かくなったか寒くなったか」などを読み取ることができます。
こうしたデータ分析の力は、将来さまざまな分野で役立ちます。
調査や研究、ビジネスでの意思決定などにも、数字を正しく読み取るスキルが求められます。
正の数・負の数が身につける「情報処理能力」
現代は、昔に比べて多くの情報があふれる世の中になりました。
このような世の中になってから、実は正の数・負の数の考え方が非常に重要になってきています。
具体的には、現代社会では、「数字で物事を理解する力」がますます重要になっています。
ネットニュースやSNS、買い物のレビュー、健康管理アプリなど、数字があふれている中で、正しく理解して判断する力が求められています。
たとえば
- 体重が1週間で−1.5kg→「よし、順調!」
- 支出が予算より−8,000円→「節約できた!」
- テストの点数が前回より+10点→「がんばった!」
些細な例を挙げましたが、このように、数字を「プラス・マイナスの変化」として捉えることができれば、情報を瞬時に理解して、次の行動に活かすことができます。
また、これらの情報を表やグラフで見せる場面でも、「このマイナスって良いこと?悪いこと?」というような判断ができるようになります。
正の数・負の数は「自分で考える力」の第1歩
ここまで述べてきたように、正の数・負の数の考え方は、物事を判断する際に非常に高い効果を発揮していきます。
学校で学ぶ数学の知識は、単なるテストの点数だけでなく、「考える力」「比べる力」「先を読む力」を養ってくれます。
正の数・負の数を学ぶことは、「変化を読み取り、意味を考える」という思考を身につける第1歩です。
- 何が増えた?減った?
- どれだけ変わった?なぜ?
- 今後どうなりそう?
こういった問いに答える力は、学校の勉強はもちろん、将来社会に出たときにも大いに役立つ力です。
まとめ
このページでは正の数・負の数の基本的な定義や勉強のコツ、社会やこれからの仕事で活かされている例など網羅的に紹介してきました。
気温の変化、標高、スポーツの得点差、家計の収支、ゲームやアプリの表示、仕事やテクノロジーの世界まで──正の数・負の数は、あらゆるところに存在しています。
「身の回りのマイナスが使われているものって?」「日常生活にある正負の数って?」という疑問を持って検索してきた皆さんにとって、このページが「なるほど!」と思える内容になっていれば幸いです。
改めてになりますが、大切なのは、正の数・負の数はただの数字ではなく、「変化を見つけるツール」だということです。
日々の暮らしの中にあるちょっとした数字に注目して、「これは+?それとも−?」「どれだけ変化した?」と考える習慣を持つことが、数学を使いこなす力へとつながっていきます。
ここで学んだこと、気づいたことを大切にしながら、これからの数学の勉強に向き合ってみてください。
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