前回までのページで、中1の数学で一次式や一次方程式が日常生活でどういった形で活かされ、利用できるのかを解説してきました。
解説をすると何となくでも数学の知識を日常生活の中で意識できたり、実際に活用することもできることもあったかと思います。
数学の知識を日常生活に落とし込んで考えていくことが少しずつできるようになってきたところで、今回は、「不等式」の知識について考えていきたいと思います。
不等式は数式の左辺と右辺の大小を比べることができる数式でしたが、これが日常生活でどのように活かされているか、または活かすことができるかイメージはつくでしょうか?
このページでは、不等式の知識や実際に利活用されている事例を紹介していきたいと思います。
不等式の知識や計算方法について先にしっかりと復習しておきたい方は、下記のページで不等式の基本的な事項について解説していますので、先にそちらで復習したのちにこのページに戻ってきてみてください。

大小比較は毎日行っている
冒頭でも述べましたが、不等式は数式の左辺と右辺の大小比較を行うための考え方でした。
もっと簡単に言えば、不等式の基本的な考え方は、「比べる」ことです。
たとえば、次のような場面を思い出してみてください。
- このバッグは3,000円より高いから買えないな
- 5人より少なければ予約なしで入れるよ
- 身長が120cm以上ないとこのアトラクションには乗れません
これらは、すべて不等式の考え方を使っている例です。
たとえば「3,000円より高い」というのは「$金額>3000$」という不等式で表せます。
また「5人より少ない」は「$人数<5$」、「120cm以上」は「$身長\geqq120$」となります。
このように、私たちは知らないうちに毎日の生活の中で不等式の感覚を使って行動しているのです。
具体的な事例を紹介
学校の数学の授業では、「$x>3$」や「$2x+1\leqq7$」などの不等式を計算します。
これは、どのような条件を満たす値があるのかを調べるための方法です。
たとえばこんな問題を考えてみましょう。
例題
「ジュースが1本120円、チョコレートが1個80円です。500円以内で買えるチョコレートの数$x$の条件を不等式で表しなさい。」
考え方
1本120円のジュースを買った後、チョコレートを$x$個買うと、合計金額は「$120+80x$」円になります。
500円以内で収めたいので、
$120+80x\leqq500$
という不等式になります。
これを解くと、
$80x\leqq380$
$x\leqq4.75$
つまり、チョコレートは4個以下までなら買えるということです。
このように不等式を使えば、「どこまでなら大丈夫か」という限度や「これ以上は無理」という上限を知ることができます。
これはお金の計算、時間の使い方、人数制限など、実生活に直結する大切な力なのです。
安全・安心にもつながる不等式の力
上記の例は問題集などでも取り上げられる例ではありますが、ここから紹介するのは、実際に日常生活の中で不等式の考え方が活かされているものを紹介していきます。
日常生活の中で特に不等式の考え方が活かされるものは、「安全に過ごすため」のものに役立っています。
たとえば、次のような例があります。
- 「エレベーターの最大人数は8人までです」→ $人数\leqq8$
- 「この橋は車の重さが10トンを超えると通れません」→ $重さ\leqq10トン$
- 「熱中症の危険がある気温は35度以上です」→ $気温\geqq35$
これらはすべて、「これ以上(または以下)になると危険」ということを伝えるための条件式です。
不等式を使えば、「これ以上にならないようにしよう」「この条件を超えたら注意しよう」といった安全の目安を決めることができるのです。
つまり、不等式は自分や人の命を守るためにも重要で大切な考え方として活用されています。
将来の仕事にもつながる不等式の考え方
実際に社会の中で活用されている例を紹介しましたが、ここからは将来のお仕事の中で不等式の考え方や知識が活かされるもの紹介していきます。
たとえば、次のような職業では不等式が使われています。
プログラマーやゲーム開発者
まず最もイメージがしやすい、プログラマーやゲームの開発者からです。
ゲームの中で「HPが0以下になったらゲームオーバー」などの条件分岐を設定するのに不等式を使います。
たとえば、「HP$\leqq0$ならゲームオーバー」といった具合です。
建築士や設計士
次に建築士や設計士のお仕事です。
先ほど紹介した例につながっていますが、建物や社会の中の構造物、建造物の作成や組み立てにかかわるこれらの職業の方々は、不等式の考え方を日常的に利用しています。
たとえば、建物の柱にかかる重さが「ある限度」を超えないように設計します。
具体的なものを挙げると、「1本の柱にかかる重さは1,000kg以下でなければならない」→ $重さ\leqq1000$
といった具合です。
経営者や販売企画の仕事
3つ目の例は、会社や企業の経営者や販売にかかわるお仕事についてです。
これらの職業の方々は特に、利益に関する計算で不等式を活用しています。
例えば、ある商品を「500円以内で作って、800円以上で売れば利益が出る」といった条件を考えるときに、
$仕入れ価格\leqq500$、$販売価格\geqq800$といった不等式を使って計画を立てます。
このように、不等式は「どの条件を守るか」「どこまでなら可能か」といった判断をするときにとても重要です。
どんな仕事にも、ある制限や条件があるからこそ、不等式の考え方や知識は必要不可欠なのです。
不等式は「判断力」を高める道具
ここまで様々な事例を紹介してきましたが、不等式が日常生活で非常に重要な考え方をするために必要な知識だということはわかっていただけたでしょうか?
不等式は単に「計算するための式」ではありません。
それは、「今の状況から、どうすれば良いかを判断するための道具」でもあるのです。
「あと何分以内なら間に合う?」「これ以上やると危ない?」「どうすれば条件をクリアできる?」
こうした考えを持つことは、自分で状況を見て行動する力にもつながります。
大げさかもしれませんが、不等式を学ぶことで、社会の中で自立して生きていくための大切な力を身につけているのです。
まとめ
このページでは不等式の考え方や知識が日常生活の中でどのように活かされていたり、活用されているかを紹介してきました。
改めてになりますが、不等式はいろいろな場面で使える大切な考え方です。
- 「〇〇より大きい・小さい」といった日常の判断
- 買い物や時間管理での計算
- 安全を守るための条件
- 将来の仕事での活用 など
どれをとっても、不等式は「自分で考えて行動する」ための力を高めてくれます。
「ただの記号や計算」と思っていた不等式が、実は生活や未来を支えてくれている――そう考えると、ちょっと見方が変わるでしょうか?
これから不等式の学習をするときには、「この考え方はどこで使えるかな?」と、ぜひ身の回りと結びつけて考えてみながら学習してみてください。
コメント