中学1年生で学ぶ「正の数・負の数」、そして「加法・減法」の計算は、数学の学習の最初のハードルだといえます。
正の数は「0より大きい数」としてすぐに理解できても、負の数、つまり「0より小さい数」については、普段の生活であまり意識することが少ないため、イメージがつかみにくいものです。
たとえば「−5」という数は、教科書の中だけの特殊な数字のように感じられる人もいるでしょう。
しかし、実際には私たちの身の回りで負の数はたくさん使われており、気づかないうちに「負の数の足し算や引き算」を活用しているのです。
このページでは、まず正の数負の数の基本的な考え方を復習し、そのうえで「日常生活で0より小さい数がどのように使われているのか」や「正の数負の数の加法減法が役立っている具体的な例」をわかりやすく紹介していきます。
特に、身近な事例を取り上げながら、なぜ負の数や加法・減法が必要なのかを丁寧に解説していきます。
また、このページを読む前に、学習内容として正負の数の加法減法を理解していきたいという学生さんは、下記のページで正負の数の加法減法について解説しているので、そちらを参考にしてからこのページを読んでみてください。

正の数と負の数の基本をおさらい
まずは「正の数」と「負の数」が何を意味しているのか、しっかり押さえておきましょう。
- 正の数:0より大きい数(例:+3、+10、+25)
- 負の数:0より小さい数(例:−2、−5、−100)
- 0:正の数でも負の数でもない基準の数
正の数には「+」をつけなくても自然に理解できますが、数学的には+5と書くこともあります。
負の数は必ず「−」をつけて表します。
この数の表現は、単に「数字を並べる」ためではなく、現実の出来事を「増えた・減った」「基準より上・基準より下」と表すために必要不可欠なものです。
たとえば、気温が氷点下になったとき「マイナスの温度」として表すことができるのは負の数のおかげです。
また、銀行口座の残高がマイナスになる「赤字」も、負の数の代表的な使い方といえるでしょう。
負の数が使われる日常生活の場面
正の数負の数について簡単に振り返ったところで、ここからは、具体的に「0より小さい数」が日常生活でどのように活用されているのかを見ていきましょう。
気温の変化と負の数
最もわかりやすい例が「気温」です。
「今日は−3℃だったよ」「昨日より5℃上がったね」という会話を耳にしたことはありませんか?
これはまさに負の数と正の数負の数の加法減法が使われている例です。
たとえば、朝の気温が−2℃で昼に4℃になったとします。
このとき「気温は何度上がったか?」を考えるには、次のように計算します。
$4−(−2)=6$
つまり、6℃上がったことがわかります。
このように、気温の変化を正確に表すために、負の数と加法・減法が役立っています。
お金の出入りと負の数
お金の管理も負の数が活躍する分野です。
- お金が増えるとき:+(プラス)
- お金が減るとき:−(マイナス)
たとえば、所持金が1,000円あり、300円の文房具と500円のパンを買ったらどうなるでしょうか?
$1000−300−500=200$
残金は200円になります。
さらに、もし友達から500円を借りていた場合は「−500円」として表すことができます。
これは借金の状態を表しており、所持金と合わせて考えることで正確な残高を計算できます。
こうした考え方は、家計簿や銀行口座の管理にも直結しています。
銀行残高が「−3,000円」と表示される場合、それは引き出し可能な残高を超えてしまっていることを意味します。
スポーツやゲームにおける負の数
スポーツの得点やテレビゲームのスコアも、正の数負の数で表すことができます。
サッカーでは「得点から失点を引く」ことで得失点差を求めます。
たとえば得点が10点、失点が12点のチームの得失点差は、
$10−12=−2$
この「−2」という値は「失点が2点多い」ことを意味しています。
また、ゲームでも「敵からダメージを受けてHPが−30された」「アイテムでスコアが+50になった」という形で数値が増えたり減ったりします。
これらはすべて、正の数負の数の足し算・引き算で処理されているのです。
建物の階数表示
普段はあまり意識しませんが、建物の階数を表すときにも負の数が使われています。
- 地上1階 → 0階
- 地下1階 → −1階
- 地下2階 → −2階
- 地上3階 → +3階
もし「地下2階(−2階)から地上3階(+3階)まで上がる」としたら、
$3−(−2)=5$
つまり5階分の移動をしたことになります。
エレベーターの移動を考えるときにも、負の数と加法減法は自然と使われているのです。
正の数負の数を理解することで得られる力
ここまで紹介してきた例からわかるように、正の数負の数とその加法減法は、気温・お金・スポーツ・建物など、私たちの日常生活のあらゆる場面で使われています。
数学を学んでいると「こんなこと現実で使うのかな?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、実際には0より小さい数や正の数負の数の計算は、生活を理解するうえで欠かせない道具となっているのです。
また、この考え方は将来の仕事や専門分野でも応用されます。
たとえば経済分野では「利益」と「損失」をプラス・マイナスで管理しますし、科学では「基準値からの変化量」を負の数で表すことがあります。
つまり「正の数負の数の加法減法を理解すること」は、日常生活をより正確に把握するための基礎力であり、学び続けるための入り口でもあるのです。
正の数負の数を「変化」としてとらえる
ここまで見てきた例は、数の計算に注目してきましたが、正の数負の数の計算で重要なのは、単なる数の操作ではなく「変化」を表していると理解することです。
- 正の数(+) … 増える、上がる、プラスになる
- 負の数(−) … 減る、下がる、マイナスになる
この「変化」をしっかり意識することで、足し算や引き算がぐっと理解しやすくなります。
たとえば「現在の状態からさらに−3の変化をする」といったとき、これは「3減る」という意味です。
逆に「現在の状態から−3を引く(−(−3))」は「3増える」と同じことになります。
この考え方を軸にすると、日常生活の出来事も「変化の積み重ね」として表現できるようになり、自然に正の数負の数の加法減法が使えるようになります。
お金の管理をもっと深く考える
前半の例の中では「財布のお金が増える・減る」という例を出しました。
ここからはもう少し複雑なケースを考えてみましょう。
クレジットカードの利用
現金だけでなく、クレジットカードの利用を考えると、負の数がよりはっきりと役立ちます。
たとえば、口座残高が1万円ある状態でカードを使って3,000円を買い物したとします。
このとき口座からすぐに引き落とされるわけではありませんが、「−3,000円」という形で記録しておけば、残高を正しく把握できます。
- 口座残高:10,000円
- クレジット利用:−3,000円
- 実際の利用可能額:10,000 − 3,000 = 7,000円
こうした考え方は、家計簿や資産管理の基本でもあります。
借金と返済
さらに「借金」という状況を考えてみましょう。
借金はまさに「負の残高」を表すものです。
たとえば、所持金が0円で友達に500円借りると「−500円」という状態になります。
その後、バイト代として1,000円をもらった場合は、
$−500+1000=500$
となり、返済を考えた残りの手持ちは500円です。
このように、負の数を使うと借金や返済の計算がとてもわかりやすく整理できます。
気温の上下を計算で理解する
前半の例の中で、気温は最も身近だとお伝えしました。
なので、気温についてももう少し具体的に「変化の積み重ね」で考えてみましょう。
例1:気温の一日の変化
朝の気温が−4℃で、昼には6℃まで上がり、夜には再び−1℃まで下がったとします。
この変化を追ってみましょう。
- 朝 → 昼:$6 − (−4) = 10$(10℃上昇)
- 昼 → 夜:$−1 − (+6) = −7$(7℃下降)
最初から最後を比べると、$−1 − (−4) = +3$(3℃上昇)になります。
このように、負の数を用いると気温の「上がった・下がった」をスッキリ整理できます。
例2:年間の平均気温
北海道や北欧など寒い地域では、冬の平均気温が−10℃を下回ることがあります。
夏の平均気温が20℃だとすると、年間での気温差は
$20−(−10)=30℃$
となり、大きな温度差があることがわかります。
地理や気象の学習においても、正の数負の数は不可欠なのです。
ゲームの世界での応用
お金や気温の話だピンとこない人のために、ゲームの例も詳しく見ていきます。
ゲームは「数の増減」が連続して発生する世界です。
HP(体力)やスコアは正の数負の数をそのまま使って表現できます。
例1:RPGのHP計算
プレイヤーのHPが100のとき、敵から20のダメージを受けたらHPは
$100−20=80$
になります。
さらに毒状態で毎ターン−10されると、数ターン後にはどんどん減っていきます。
反対に、回復アイテムで+30回復した場合は、
$80+30=110$
となります。
ただし、最大HPが100であるなら「100を超えない」という条件をつけて管理する必要があります。
例2:得点の増減
スポーツゲームやパズルゲームでは「スコア+50点」「ペナルティ−30点」といった形で増減が記録されます。
このとき、加法減法を使って合計点を求めれば、瞬時に自分のスコアがどれだけ上下しているかを把握できます。
ゲームを通して無意識のうちに正の数負の数の計算をしている人も多いのです。
地下や海抜を考えるとき
身の回りの例で言えば、建物の階数に加えて「地面より下」という考え方も、負の数が役立つ場面です。
地下鉄の深さ
地下鉄のホームが地上から−20mの位置にあり、地上に出るまでエスカレーターで移動したとしましょう。
このときの変化は
$0−(−20)=20$
で、20m上がったことになります。
海抜の表現
地理では「海抜」という表現もよく使います。
海面を0としたとき、海面より下にある土地(例えば死海沿岸の−400m)は負の数で表現されます。
逆に富士山の標高3,776mは「+3776m」です。
海抜を基準にすると、土地の高低を正確に比較できるのです。
正の数負の数と時間の関係
ここまでの例は、現実に目に見えるものでした。
そして、身の回りのもので「時間」も正の数負の数を使って考えることがあります。
あまり意識されませんが、「時間」も正の数負の数を無意識に使っています。
たとえば試験開始まであと10分なら「−10分」、試験が始まって5分経ったら「+5分」と考えることができます。
こうすると「開始前」と「開始後」を同じ目盛りで管理できます。
また、歴史年表では西暦を正負で表すことができます。
西暦0年を基準にすると、紀元前は「負の数」で、紀元後は「正の数」で表されます。
- 紀元前500年 → −500
- 紀元後2025年 → +2025
このように表すことで、紀元前から紀元後までの「差」を一つの計算で求められるようになります。
正の数負の数が活躍する社会の場面
ここまでで「負の数は身近なものだ」という実感が持てたでしょうか?
では、実際に社会で正の数負の数が活用されている例を見ていきます。
①経済・株価の変動
ニュースで「株価が−200円下落した」「前日比+1.5%」といった表現を耳にすることはありませんか?
これも正の数負の数の考え方そのものです。
- 株価上昇 → 正の数(プラス)
- 株価下落 → 負の数(マイナス)
投資や経済の分野では、日常的に正の数負の数を使って「変化」を把握しています。
②科学の世界での活用
正の数負の数は数学の学習分野であるため、数学を発展させた物理や化学でも、正の数負の数が欠かせません。
たとえば、下記のようなもので活用されています。
- 速度:進行方向を+、逆方向を−で表す
- 電気:正電荷・負電荷
- 化学反応:反応熱の出入りを+(吸収)・−(放出)で表す
特に物理では「向きのある量(ベクトル)」を扱うときに正の数負の数の知識が役立ちます。
③コンピュータ・プログラミング
物理や化学と同じように、ITも数学の考え方を応用しており、その中でも特にプログラミングの世界では正の数負の数は重要です。
- ゲーム開発ではキャラクターの座標を+や−で管理
- 画像処理では明るさの補正を+(明るくする)、−(暗くする)で指定
- 金融アプリでは収支を+(収入)、−(支出)で記録
このように、負の数の計算がそのまま現実のアプリやシステムに使われています。
正の数負の数を「未来につながる知識」として学ぶ
「数学を勉強しても役に立たない」という声をよく耳にします。
ですが、ここまで見てきたとおり、正の数負の数はまさに生活・社会・未来をつなぐ知識です。
- 家計やお金の管理
- 気温や環境の変化
- 科学・技術の発展
- データ分析やAI開発
これらのどれをとっても、正の数負の数の考え方が欠かせません。
特にこれからの時代はデータを扱う機会が増えるため、数の増減を正しく理解できることは「情報を読み解く力」につながります。
まとめ
ここまで、正の数負の数の加法・減法が日常生活や社会のさまざまな場面で活躍していることを見てきました。
- 0より小さい数(負の数) は、気温・お金・時間・位置などを表すときに自然に使われている
- 加法・減法は、「変化の積み重ね」として考えると理解しやすい
- 社会や未来においても、経済・科学・プログラミングなど幅広い分野で必要になる
つまり、正の数負の数は単なる中学数学の範囲にとどまらず、私たちの生活を支える「普遍的な考え方」なのです。
もし今「正の数・負の数は難しい」と感じている人も、今日紹介したような身近な例を思い浮かべながら学習してみてください。
きっと「なるほど!」と理解できる瞬間が増えていきます。
そして数学を学ぶときには、ぜひ「この知識はどんな場面で使えるのか?」と考えてみましょう。
それが、数学を楽しく、実用的に身につける第一歩となります。
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