「うちの子、理数系が苦手みたいで…」という声は、保護者の間でもよく聞かれます。
成績や学習への意欲に関する不安を感じたとき、多くの親御さんは「家庭でもできるサポートがあればしてあげたい」と考えるのではないでしょうか。
しかし、実際にサポートをしようと思い立っても、特に数学や理科といった理系科目は、「難しそう」「どうやって教えればよいのかわからない」といった声も多く、親としても手が出しづらい科目に感じられがちです。
ですが、実際には特別な知識がなくても、家庭の中で理系科目の苦手意識を少しずつ軽減するサポート方法はたくさんあります。
そこでこのページではまず、なぜ子どもが理系科目を苦手に感じるのかという背景を丁寧に解説し、その上で保護者が取るべき具体的なアプローチをご紹介します。
子どもが理系科目を苦手と感じる理由とは
まず、子どもが理系科目を苦手に感じる理由について見ていきます。
お子さんが「理系科目は苦手」と感じる背景には、単なる学力の問題だけでなく、心理的な要因や学習環境の影響など、さまざまな要素が絡み合っています。
まずはこの「苦手の正体」を明確にしなければ、適切なサポートも難しくなってしまいます。
感情的な「苦手意識」が先に来てしまうことも
「理系科目は難しい」「数式を見るだけで頭が痛くなる」—これは単に勉強ができないということではなく、過去の失敗体験やつまずきが原因で、学習に対する不安が先行している状態です。
例えば、小学生のときに分数の計算でつまずいた経験がある子は、その後の単元でも自信を持てず、「どうせ自分には無理」と感じてしまうことがあります。
このようなネガティブな気持ちが、勉強への拒否反応につながってしまうのです。
このような感情的なブレーキがあると、どんなに良質な教材を使っても、集中して取り組むことが難しくなってしまいます。
理系科目の学習は「積み上げ式」であるという特性
苦手意識が強まるもう一つの理由が、理系科目特有の「積み上げ型の構造」です。
たとえば数学では、計算の基本が身についていないと、方程式や関数の単元に入ったときに理解が追いつきません。
また、理科でも「物質の性質」「電気回路」などの単元では、前提知識がないと授業の内容そのものがピンとこないということも珍しくありません。
つまり、「今わからない」のではなく「前からつまずいていた」のが根本的な原因であることが多いのです。
だからこそ、親御さんとしては今の成績だけを見るのではなく、過去のつまずきまでさかのぼって理解する姿勢が必要です。
家庭でできる理系科目に苦手意識を持つ子への最初のサポート
子どもの理系苦手の理由がわかってきたところで、次に大切なのが「では家庭ではどのようにサポートすればいいのか?」という視点です。
結論からお話すると、サポートの方法として筆者が推奨するのは、いきなり成績を上げようとするよりも、まずは子どもが「理系ってちょっと面白いかも」と思えるような働きかけが重要だと考えています。
そこで、最初のステップとして効果的なのが、日常生活の中で興味関心を引き出す工夫です。
日常の出来事を理系的視点でとらえる練習から
例えば料理の最中、「このレシピの2人前を3人前にしたいとき、材料はどのくらい増やせばいいと思う?」という問いかけをするだけで、「比や割合」の考え方が自然と身につきます。
あるいは天気の話をしているとき、「なぜ雷が光った後に音が聞こえるのか知ってる?」などと会話の中に理科的な問いを織り交ぜるのも効果的です。
このように、理系科目を勉強ではなく日常とつながっているものとして意識させることが、苦手意識を和らげる第一歩となります。
子どもの「好きなこと」から広げるアプローチ
また、お子さんの趣味や好きなことを活用するのも効果的です。
たとえばスポーツが好きな子なら、ボールの軌道から物理的な法則を学ぶこともできます。
電車が好きなら、加速度やエネルギーの話も自然に導入できます。
お子さんの「興味の芽」を見逃さず、それを理系的な視点と結びつける—これは親にしかできない大切なサポートのひとつです。
学習環境づくりも家庭でできる確かなサポート
「理系に関心を持つ」段階を踏んだら、次は学習に集中できる環境を整えることが大切です。
苦手意識がある教科に取り組むには、少しでもストレスが少ない空間が必要だからです。
静かで整った学習スペースを確保する
まずは、なるべく静かで整理された勉強スペースを作ってあげましょう。
リビングの一角でも構いませんが、周囲にテレビやゲーム、スマホなどの誘惑があると集中力が削がれます。
さらに、机やイスの高さ、照明の明るさなどもチェックして、子どもが座って学ぶことに前向きになれる環境を意識してください。
また、必要に応じて、使いやすい文具や参考書も揃えてあげましょう。
「勉強しようと思ったけど消しゴムが見つからない」という些細なことで、子どもはすぐにモチベーションを失ってしまいます。
休憩時間やペース配分にも配慮を
また、勉強時間に関連して、勉強時間中の休憩や勉強時間そのもののペースについてもサポートしてあげると効果的です。
学習に集中できる時間は、年齢や性格によって異なりますが、中学生・高校生なら40~50分を目安に区切るのが効果的です。
この時間を超えると集中力が落ちるため、短い休憩を挟みながらメリハリをつけた勉強サイクルを作っていきましょう。
また、休憩時間には軽いストレッチや水分補給などを促し、体も心もリフレッシュできるようにサポートします。
家庭でできる学習支援:理系科目に取り組む具体的なサポート方法
ここまでで、「苦手意識の原因」と「興味を引き出す環境づくり」について理解を深めました。
ここからは、いよいよお子さんが理系科目に実際に取り組みはじめたとき、親がどのように関わると効果的かを考えていきます。
親が勉強を直接教えられない場合でも、できることはたくさんあります。
むしろ「勉強を教える」よりも、「勉強しやすくする仕掛けや関わり方」のほうが、子どもの自主性と理解を伸ばすカギとなるのです。
ポイント①:「できた」を見逃さずに言葉にする
まず意識したいのは、お子さんが小さなステップでも「できた!」と感じた瞬間を、すかさず認めることです。
たとえば、
- 「今日は30分集中できたね」
- 「この問題、前はできなかったのに今日は解けたね」
- 「グラフをきれいに描けてるよ!」
といった形で、学習成果だけでなく過程も含めて肯定的にフィードバックをしていくことが大切です。
特に理系科目では、答えの正しさ以上に「どのように考えたか」「どう工夫したか」といった思考のプロセスを褒めることで、論理的思考への関心も高まっていきます。
ポイント②:「質問の仕方」をサポートしてあげる
子どもが問題につまずいたとき、つい「なんでわからないの?」「これはこうでしょ」と口出ししたくなってしまうことがあります。
しかし、そのような対応は子どもの自信を削ぐことにもなりかねません。
そこで大切なのは、「どこでつまずいているのかを一緒に探す」ことです。
たとえば以下のように声をかけると、子ども自身がわからない部分を言語化しやすくなります。
- 「この問題、どこまではわかる?」
- 「前と同じような問題やったことあるかな?」
- 「図にするとわかりやすいかもね」
このような問いかけを通して、子ども自身が自分の疑問に気づき、自力で解決できるよう導くことが、家庭での理想的なサポートです。
理系科目に取り組む時間を“当たり前”にする仕組みづくり
学習支援は「一時的ながんばり」よりも、「毎日少しずつ」の積み重ねが重要です。
特に理系科目は、継続して練習することで理解が深まり、応用力もついてきます。
ここでは、子どもが理系科目に日常的に取り組む習慣をつくるための家庭内の工夫をご紹介します。
家庭内に「理系タイム」をつくってみる
子どもが理系科目を後回しにしがちな理由のひとつに、「取り組む時間を確保できていない」ことがあります。
英語や国語は宿題や授業で出される頻度が高い一方、数学や理科の家庭学習は、意識しないと不足しがちです。
そこでおすすめなのが、毎日20~30分だけ「理系タイム」として確保する方法です。
これは「理科や数学に関することなら何でもOK」とし、問題集や復習、実験動画の視聴など、子どもの気分に合わせて柔軟に運用するのがコツです。
親も一緒に問題を解いたり、実験の動画を観て「へぇ〜」とリアクションしたりするだけでも、子どもの学習意欲は高まります。
親子で「一緒に学ぶ」姿勢をもつ
理系科目に関する親の知識が浅くても問題ありません。
むしろ、「わたしも昔わからなかったけど、一緒に見てみようか」といった姿勢のほうが、子どもは安心して学べます。
一緒に調べたり考えたりすることで、学びの楽しさやプロセスの大切さを肌で感じられるようになります。
特に近年では、理科実験のYouTubeチャンネルや、子ども向けの理系アニメ・図鑑なども充実しており、親子で楽しく学べる素材が豊富です。
おすすめ:YouTube「Science Channel(科学技術振興機構)」
実験や科学トピックを親子で楽しく学べる動画が多数公開されています。
子どもの特性に応じた個別アプローチを意識する
ここまで一般的な家庭支援方法を見てきましたが、理系科目の苦手意識を克服するためのサポートとして最も効果的なのは、お子さん自身の性格・得意不得意に合わせたサポートをすることです。
「集中力が続かない」「ミスが多い」「思い込みが強い」など、理系のつまずきにはさまざまなパターンがあります。
こうした個性を否定せず、うまく武器に変えていく視点が重要です。
「集中力が続かない子」には短時間×成功体験を
まず、集中力が続かない子は、10分でも15分でも良いので、集中しやすい時間帯に簡単な問題を解かせて成功体験を積ませましょう。
特に朝の登校前や、夕食前のスキマ時間を活用することで、無理なく習慣化が狙えます。
また「解けた=褒められる」の成功パターンを繰り返すことで、学ぶことへの前向きな感情が育ちます。
「理解はできるがケアレスミスが多い子」には“見直し”のルーティンを
次に、解き方そのものは合っているのに、計算ミスや単位の付け忘れなどが原因で点を落とす子には、「ミスを防ぐ見直しルール」を導入してみましょう。
たとえば、
- 「最後に式をもう一度読み直す」
- 「計算の途中式を1行あけて書く」
- 「答えに単位をつけているか確認する」
といったルールを約束として定着させることで、ミスが減るだけでなく自信にもつながります。
思春期以降のサポートは「教える」から「支える」へ
ここまでの話では、家庭での学習支援や子どもの特性に合わせたアプローチについてお伝えしました。
しかし、子どもが中学生・高校生になっていくと、徐々に親の関わり方にも変化が求められます。
特に理系科目に関しては、内容が高度化するため、家庭で教えることが難しくなり、「どう関わればいいのかわからない」と悩む親御さんも多いのではないでしょうか。
ここからは、思春期以降の理系科目との向き合い方と、親御さんでもできる寄り添い方の工夫をお伝えします。
中高生の理系学習:自立を促す関わり方のコツ
中高生になると、子どもは親からの干渉を嫌がる傾向が強まります。
一方で、理系科目は本格的に難易度が上がり、サポートが必要な時期でもあります。
その中で親御さんができるサポートは、「直接教える」ではなく、学習の進め方やモチベーション管理の環境支援です。
このような具体的な方法をお伝えしていきます。
定期テストや模試の振り返りを一緒に行う
まずは、定期テストや模試の結果を一緒に振り返るということです。
テストが返ってきたタイミングは、親子で自然に学習状況を話し合える貴重な機会です。
- 「今回の数学、どの単元が難しかった?」
- 「理科の記述、思ったより取れたね」
- 「どこができて、どこがミスだった?」
といった形で、結果を責めるのではなく、冷静に振り返りをサポートする姿勢が重要です。
できれば点数だけでなく、本人の振り返りコメントなども残すと、次回以降に役立ちます。
親が“学習計画”の伴走者になる
また、思春期の子どもは「言われたことをやる」のではなく、「自分で決めたことをやる」方がやる気が続きます。
学習計画を一緒に立てるときは、
- 本人の希望やスケジュールを尊重する
- 「詰め込みすぎない」スケジューリングを提案する
- 計画倒れに終わっても責めない
といったスタンスで、「親が支配する」のではなく「伴走する」という意識が大切です。
学習内容は専門家(塾・学校・参考書)に任せつつ、親はそのベースとなる時間管理や感情面の支援に徹するのが理想的です。
効果的な学習ツールと教材の選び方:理系科目に強くなるために
理系科目を克服するうえで、教材選びや学習方法の多様性も非常に重要です。
ここでは家庭で使えるツールやリソースを、年齢別にご紹介します。
小学生向け:遊び感覚で「理系脳」を育てる教材
小学生には、学ぶことに対する抵抗をなくすため「楽しい」と感じられる教材が最も効果的です。
特に以下のようなものが、理系的な思考を自然に育ててくれます。
- 【算数】くもんのドリルシリーズ、RISU算数(タブレット学習)
- 【理科】学研の図鑑LIVE、子ども向け実験キット
- 【アプリ】Think!Think!(ワンダーラボ)などの知育ゲームアプリ
いずれもゲーム感覚で学びながら、空間認識力や論理思考を鍛える内容になっています。
■ 参考URL:RISU算数
https://www.risu-japan.com/
小学生向けに設計されたタブレット教材。つまずいたポイントに応じた解説動画も豊富。
中学生向け:苦手克服と基礎の定着を重視
中学生では、学習としての基礎力の定着と自分で解決する力が鍵になります。
特におすすめなのは、
- 【数学】チャート式シリーズ(特に白チャート)、ニューコース
- 【理科】YouTubeの「とある男が授業してみた(葉一)」チャンネル
- 【問題集】塾技シリーズ(応用対策)など
動画教材を組み合わせると、学校や塾とは違った視点から理解が深まりやすくなります。
■ YouTube:とある男が授業してみた
https://www.youtube.com/@user-haichi
葉一先生による中学生向けの理系授業が、完全無料で視聴可能です。
高校生向け:理解の深化と進路対策へ
高校では、これからの進路を考えて大学受験を見据えた本格的な対策が必要となります。
理系進学を目指す場合、早期に基礎を固め、演習を重ねることがカギです。
- 【数学】Focus Gold(フォーカスゴールド)、青チャート
- 【物理・化学】宇宙一わかりやすいシリーズ(船登惟希著)
- 【映像授業】スタディサプリ、河合塾One など
受験対策では、「解法のパターンを覚える」「時間配分を意識する」などの実践力も求められるため、教材のレベル選定は子どもの現状に合わせて調整が必要です。
将来につながる理系進路を視野に入れた支援とは?
ここまでの学習支援を通して、理系科目への苦手意識が軽減されてきたら、ぜひ次に意識したいのが「将来につながる理系の可能性」です。
親御さんが「理系進路は専門的で難しそう」と感じていても、実は文系的な要素が含まれる理系職種や、女性でも活躍できる理工分野も多く存在します。
理系進路の選択肢を広げるための家庭の関わり
まず子どもが理系で進路を考えている場合は、家庭においては進路の選択肢を増やしてあげる機会を設けてあげるといいでしょう。
そのためには例えば、下記のようなことが取り組みとして挙げられます。
- 興味のある職業(研究者、エンジニア、建築士など)のドキュメンタリーを一緒に見る
- 「STEM(科学・技術・工学・数学)」をテーマにしたイベントや体験教室に参加する
- 学校の進路ガイダンスやオープンキャンパスに同行する
こうした体験を通して、「理系=苦手科目」から「理系=興味ある未来」へと、子どもの見方が変わっていきます。
■ STEM教育関連イベント紹介サイト:こくちーずプロ(https://www.kokuchpro.com/)
→「STEM 教室」「理科 実験 教室」などで地域検索可能
まとめ
このページでは、子どもが理系科目が苦手でも、家庭でできるサポート方法を中心に紹介していきました。
改めてですが、子どもが理系科目に苦手意識があるとき、下記のようなことを意識しながら一緒に子どもが抱えている課題を乗り越えるようにしてもらいたいです。
- 子ども自身の気持ちを否定せず
- 小さな成功体験を積ませながら
- 親が支配ではなく伴走の立場で関わる
理系科目は、一度つまずいてもやり直しが効きやすい分野でもあります。
早いうちから苦手の芽に気づき、家庭でできるサポートを丁寧に積み重ねることで、子どもは自信を持って未来を描いていけるようになります。
理系科目は小さな成功体験を重ねていくことが何よりも重要になります。
子どもの小さな成長を、時には伴走者として、時には1番の支援者として働きかけを行っていくようにしましょう。
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