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正の数・負の数の掛け算・割り算を完全攻略:乗法と除法の考え方・応用まで一挙解説

中学数学

前回のページでは正の数・負の数の足し算と引き算について解説してきました。

足し算と引き算があるということは、もちろんかけ算(乗法)と割り算(除法)も学習していきます。

正の数・負の数の学習単元においては、絶対値の次にこの乗法と除法でつまづく人が多いところになります。

その理由や負の数×負の数が正の数になることや、異符号の計算の答えは負の数になるなど、普段の生活においては意識しないことを学習することが多く、また計算を進めていくうえでもイメージがしにくいということがあります。

なので、このページでは、正の数・負の数のかけ算、割り算について考え方や応用例まで、しっかりと解説していきたいと思います。

 

正の数・負の数とは?日常から考える数の意味

まずは簡単に正の数・負の数について振り返っておきましょう。

簡単に言えば、

  • 正の数(+):0より大きい数(例:+5、+0.3、+100)
  • 負の数(−):0より小さい数(例:−4、−1.5、−200)

でしたね。

これから正の数・負の数のかけ算、割り算の学習を行っていきますが、数学で記号として使われる「+」「−」は、単なる記号ではなく方向や状態の違いを表すというイメージをこの段階でもつようにしてください。

言語化していませんでしたが、符号に方向や状態の違いを表すということは、足し算、引き算でも学習した数直線のイメージが近いです。

念のため、このイメージが日常生活でも自然に使われている例を示しておきます。

たとえば

  • 気温:−5℃ → 気温が0℃より5℃低い状態
  • 銀行の残高:−3,000円 → 借金3,000円
  • エレベーターの階数:−1階 → 地下1階

このように、私たちは知らず知らずのうちに正の数・負の数の感覚に触れているのです。

数直線でのイメージについても後述させてもらいます。

 

数直線でイメージする正負の世界

正の数・負の数を理解するうえで欠かせないのが、足し算と引き算のところでも活躍した、数直線です。

数直線とは、0を中心に右へ行くほど正の数、左へ行くほど負の数になる一直線上の図のことでした。

そして、数直線のところで一緒に登場した、絶対値という概念も正の数・負の数を理解するうえで非常に有用でした。

これにより、以下のような性質を視覚的に理解できます。

  • 正の数:0から右側(例:+3は0から右へ3)
  • 負の数:0から左側(例:−2は0から左へ2)
  • 絶対値:0からの距離(+4と−4の絶対値はどちらも4)

数直線は加法・減法だけでなく、乗法や除法をイメージで理解するうえでも役立ちます。

たとえば、「−2を3回足す」なら数直線上を左に2ずつ3回動くと考えられます。

 

正の数・負の数の掛け算(乗法)を理解する

ここまで、正の数・負の数の基本的なイメージと数直線、絶対値について簡単に振り返っていきました。

では早速、正の数・負の数のかけ算(乗法)から解説を始めていきます。

正の数・負の数のかけ算を行っていくうえで、まず大事にしてもらいたいことが符号の組み合わせです。

■ 基本ルール:符号の組み合わせに注目

なぜ符号の組み合わせを大事にしなければいけないのかを下記の計算のルールで示していきます。

式の形 結果の符号
正 × 正
負 × 負
正 × 負
負 × 正

このルールは中学校で早い段階に習いますが、多くの学生さんが「なぜ?」と疑問を感じるポイントです。

そこで、ただ覚えるのではなく、イメージや具体例を通して理解していきましょう。

■ どうして(-)×(-)が(+)になるの?

まず最もイメージがしにくい、(-)×(-)が(+)になるという部分から説明していきます。

これは多くの学生さんがイメージしにくい部分であるので、よくある質問ですが、以下のように考えると納得しやすくなります。

例1:加法・減法の拡張として捉える

「(−2)×(−3)」を考えてみましょう。

この式は、「−2を−3回繰り返す」という意味になります。

これを「−2を3回引くことの逆」と捉えると、「−2を−3回引く=+6になる」という考え方になります。

例2:日常生活のイメージで考える

例1は計算におけるイメージでしたが、日常生活では下記のようなイメージもあります。

たとえば、以下のような状況を想像してみてください

借金(マイナス)が3回帳消しになった(マイナスをマイナスした)
→ 結果的にプラス(利益)になる

これにより、(-)×(-)=(+)が「意味を持った操作」であることが分かります。

 

数学的法則から見た乗法の性質

上記の符号の組み合わせを注意したうえで、数学の計算における2つの法則も当てはまることを見ていきます。

■ 交換法則と結合法則も成り立つ

中学の数学で初めて学習する法則が「交換法則」「結合法則」でした。

そして、正の数・負の数の掛け算では、この2つの法則はそのまま使えます。

  • 交換法則:$a×b=b×a$
  • 結合法則:$(a×b)×c=a×(b×c)$

これらの法則は、計算をしやすくするために、式を柔軟に組み替えるために非常に重要です。

特に長い式や複雑な計算を扱うとき、ルールとして知っていると大きな助けになります。

(−2)×(+3)=−6
(+3)×(−2)=−6 → 交換法則が成り立つ

{(−2)×(+3)}×(−4)=−6×(−4)=+24
(−2)×{(+3)×(−4)}=(−2)×(−12)=+24 → 結合法則が成り立つ

 

日常生活と結びつける乗法の考え方

ここまでで、乗法の計算方法や符号の考え方など、勉強面における解説を行ってきました。

ここからは、抽象的な数学の問題だけでなく、日常のシーンに置き換えることで数学をより身近に考えてもらおうと思います。

例1:商品の購入と返品

まずは、イメージしやすいものの購入における例を考えていきます。

商品1個:300円
Aさん:5個購入 → 300×5=1,500円
Bさん:5個返品 → 300×(−5)=−1,500円(返金)

このように購入した場合と、返品した場合で「いくら分の商品の移動があったのか」を乗法の知識を使って考えることができます。

例2:移動距離の計算

次の例は、移動距離の計算における例です。

−2kmを3回移動 → −2×3=−6km(後ろ向きに6km移動)
−2kmを−3回移動 → −2×(−3)=6km(前進したことになる)

この例は直感的にはわかりにくいので、イメージしてもらうことになりますが、地図上で進行方向に進んだ場合をプラス、逆方向に進んだ場合をマイナスとして考えると、上記の例も理解がしやすいと思います。

このように、正の数・負の数の乗法は数学の勉強だけでなく、現実の出来事を言葉や状況と結びつけることで理解が深まります。

 

正の数・負の数の割り算(除法)を理解する

ここまでは正の数・負の数のかけ算(乗法)について、基本的な計算の考え方や日常生活に落とし込んだ例を用いて解説してきました。

ここからは、もう1つの計算、割り算(除法)について解説を行っていきます。

■ 除法とは?乗法との関係から考える

解説に入る前に、そもそも割り算(除法)とはどういう計算なのかをイメージしておきましょう。

ここでは、数学的に正しいイメージではなく、除法(割り算)は、乗法(掛け算)の逆の操作と考えると理解しやすくなるのでおすすめします。

たとえば、

3×4=12 なら、
12÷3=4、または12÷4=3

このように、「掛け算で答えが得られるような数を逆に求める操作」が除法です。

このことを踏まえて、正の数・負の数の除法についても、以下のようにルールが決まっています。

■ 除法の符号ルール

かけ算(乗法)の時にも符号のルールがありましたが、割り算(除法)でも符号のルールがあるので、しっかりと示しておきます。

式の形 結果の符号
正 ÷ 正
負 ÷ 負
正 ÷ 負
負 ÷ 正

この表からわかるように、同じ符号同士の除法は正、異なる符号同士の除法は負になります。

これは乗法のルールと全く同じであり、乗法と除法は符号の扱いにおいて一体であることが分かります。

■ 例で確認しよう:計算の意味をたしかめる

上記の符号のルールが本当に正しいのか、例を用いて実際に確かめておきましょう。

例1:−6÷(−2)

この式は、「−2を何回かければ−6になるか?」という問いに対応しています。

逆に考えると、どんな数に−2を掛けたら−6になるか?
答えは3です。
なぜなら、−2×3=−6だからです。

つまり、
−6÷(−2)=+3

例2:−8÷4

−8を4で割るというのは、「4にどんな数を掛けたら−8になるか?」という意味になります。
4を-2にを掛けると−8になる → 答えは −2

−8÷4=−2

このように、除法もイメージとしては「掛け算の逆」であり、結果の符号は掛け算のルールと揃うと覚えておけば問題ありません。

 

割り算と分数の関係:数学的な視点から

数学においては、割り算(除法)は頻繁に分数で表されることが多いです。

たとえば

  • 6÷2=3は、$\frac{6}{2}=3$
  • −8÷4=−2は、$\frac{−8}{4}=-2$
  • −10÷(−5)=+2は、$\frac{−10}{−5}=+2$

このように、除法は分数表記で理解することで視覚的にもすっきりして、分かりやすくなるというメリットがあります。

さらに、分数には以下の重要な考え方があります。

■ 分母と分子の符号で解の符号が変わる

分数表記になったとしても、分母と分子は割り算でいう割る数と割られる数に当たるわけです。

なので、分母と分子の符号が同じであれば、解の符号は正になり、異なる符号であれば解の符号は負になります。

■ 除法と逆数の関係

さらに、数学では除法を掛け算と逆数で置き換えて考えることができます。

これは、より複雑な式を簡潔に整理する目的や計算をしやすくするために重要な考え方です。

定義

$a÷b=a×\frac{1}{b}$(b≠0)

つまり、「割り算は、割る数の逆数をかけること」と同じ意味です。

このように、掛け算のルールと逆数を組み合わせることで、除法も乗法と同じ計算の流れに乗せることができるようになります。

この考え方は、中学後半や高校数学で出てくる「式の変形」や「分数の計算」「文字式」などでも頻出するため、今のうちから慣れておくと今後がとても楽になります。

 

除法と日常生活の関係

割り算の基本的な考え方や、計算方法について解説してきたので、ここからは日常生活の中で見ることができる除法の計算を確認していきます。

正の数・負の数の除法も、日常生活でのイメージと結びつけて理解すると分かりやすくなります。

例1:距離と時間から速度を求める

まず代表的な例として、距離・時間・速さの関係があります。

距離÷時間=速度という公式はよく使われます。

30kmを2時間 → 30÷2=15km/h
−30km(逆方向に進んだ)を2時間 → −30÷2=−15km/h

このように、距離が負の数になる場面を考えると、速度の向きや意味も含めて考え直すことができます。

例2:経済の場面

2つ目の例は中学生ではあまり見ることが多くないですが、経済や経営における例です。

たとえば、企業の利益や損失を計算する場合

利益(+)、損失(−)
損失30万円を3件に分割 → −30÷3=−10(1件あたり−10万円)
−30万円を−3で割る → +10(返金・帳消しのような処理)

このようにお金の流れについても、利益と損失をしっかりと定義してあげることで、正の数・負の数の計算を活かして考えることができるようになります。

 

乗法と除法をつなげる:計算の一貫性を保つ

ここまで正の数・負の数の乗法と除法の計算や日常生活への応用についてみていきました。

その中で除法は乗法に置き換えて計算ができるということを説明させてもらいました。

つまり、掛け算(乗法)と割り算(除法)は、符号のルールだけでなく、計算の基本構造も密接に関わっていることがあります。

たとえば、次の式を見てみましょう

(−2)×(+3)÷(−6)

この式では、順番に計算を進めると

  1. (−2)×(+3)=−6
  2. −6÷(−6)=+1

答えは +1になります。

このように、複数の演算が組み合わさっても、各ステップで「符号のルール」を守って進めれば、正しい答えにたどり着けます。

これが「乗法と除法の一貫性」であり、計算の正確性を保つ上で重要な視点となります。

 

複雑な式の扱い方と計算の工夫

上記で紹介した乗法と除法の一貫性についてもう少し深堀りしてみていきたいと思います。

数学の問題は単純な式ばかりではなく、掛け算と割り算が混在する複合式や、正の数・負の数が交互に登場する問題も多く出てきます。

■ 式のルールを守って正しく計算

複雑な計算問題を解くときは、解法は様々ですが、まずオーソドックスな方法としては計算のルールを守って進める方法です。

例題1

(−2)×(−3)÷(−6)

手順に従えば

  1. −2×−3=+6
  2. +6÷−6=−1

答え:−1

例題2

−12÷(−4)×(−2)

  1. −12÷(−4)=+3
  2. +3×(−2)=−6

答え:−6

この計算方法のポイントは、符号の計算を1つ1つ丁寧に行うことと、左から順番に処理することです。

■ 符号だけを一気に処理する方法

もう1つの解法として、符号だけをまとめて処理する方法があります。

この方法は、数が多数あるときの計算には符号ミスを回避する点で、高い効果を発揮します。

(−1)×(−2)×(+3)×(−4)

負の数が3つ → 奇数個の負の数 → 結果はマイナス

1×2×3×4=24 → 符号をつけて −24

この方法を知っておくと、試験やテストの場でのスピードアップに有効です。

 

他教科・将来の分野での活用例

ここまで正の数・負の数の乗法と除法の計算問題の考え方や計算の工夫、日常生活に落とし込んで考える視点についてお話してきました。

上記のほかに、さらに正の数・負の数の乗除は、数学以外の教科や将来の仕事でも幅広く活用されます。

これからお話する内容は中学生には少し難しい内容もあるので、今はここまで知らなくてもいいと思う場合は飛ばしてもらっても問題ありません。

■ 理科(物理):力の向きやエネルギーの符号

1つ目の例は、多くの数学の知識を使う、理科の中の物理の分野についてです。

物理では、方向のある量(ベクトル)が登場します。

右方向を正、左方向を負とすることで、力のつり合いや運動の変化を正の数・負の数で表現します。

たとえば、加速度$a$が負なら減速、速度$v$が負なら逆方向への運動を意味します。

式例

$m×a=F$(質量×加速度=力)
$a=−2$のとき、力も負(逆方向に働く)

■ 地理・気象:標高や気温の変化

2つ目の例は標高や気温の変化を表すことがある地理や、理科の気象の分野についてです。

  • 標高:海面より下は「−」の符号を使って表します。
  • 気温:氷点下は負の数で記録されます。

たとえば、−5℃から+10℃に上昇したとき、変化量は

+10−(−5)=15℃(符号の理解が必要)

■ 会計・経済・金融の現場

3つ目の例は、将来のお仕事の場面について、会計や経済、金融の業種です。

  • 利益=正の数、損失=負の数で計算。
  • 為替レートや株価の変動も、前日比やパーセンテージを求める際に符号の扱いが不可欠。

たとえば

株価が前日より−5%下落したとき → ×0.95(=1−0.05)
さらに翌日10%上昇 → ×1.10
連続した変化の計算では「掛け算」が基本

 

まとめ

このページでは、正の数・負の数の乗法と除法の計算方法や日常生活における応用例、計算の工夫や将来につながる内容まで解説してきました。

最後にポイントを振り返っておきましょう。

  • 正の数・負の数の掛け算・割り算には明確な符号のルールがある
  • 乗法と除法はセットで理解することで、計算の流れが自然になる
  • 日常生活や社会、他教科、将来の仕事でも幅広く活用される
  • 計算だけでなく意味や場面と結びつけて考えることが重要

ここで学習できたことは、ほんの一部であります。

ですが、ここで学んだことをしっかりと自分の知識として身につけていくと、これからの数学の学習の土台が作られていくので、つまずくことも少なくできるます。

もし数学が苦手だと感じているなら、こうした具体例や実生活との関連から始めてみると、だんだん理解が深まり、計算に対する自信もついてくるはずです。

焦らなくてもいいので、自分のペースで確実に知識を身につけていきましょう。

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