中学数学の第一歩として正の数・負の数の概念について学んできましたが、いよいよ正の数・負の数の計算問題を扱っていきます。
算数の時から計算問題が苦手、文章問題が苦手と思っている学生さんも少なくないと思いますが、実際に正の数・負の数の計算問題や文章問題は、まだ苦手意識を強くさせるような単元ではないです。
ですが、中学数学の基本の「き」になる単元であるので、油断は禁物です。
このページでは、正の数・負の数の足し算と引き算について、基本的な計算の考え方や応用問題、文章問題の取り組み方まで、網羅的に解説していきます。
正の数・負の数の復習
実際の問題に取り組んでいく前に、まずは簡単に正の数・負の数について復習しておきます。
- 正の数(+):0より大きい数。例:+1、+5、+10など。
- 負の数(−):0より小さい数。例:−1、−3、−8など。
正の数・負の数はそれぞれ上記のような数でした。
そして、正の数・負の数は日常のさまざまな場面で登場していました。
◯ 気温
代表的な例は気温に関してです。
冬の日に「今日は−2℃まで冷え込みました」という表現、聞いたことがあると思います。
ここでの「−2℃」は0℃より2℃低い、つまり負の数です。
◯ お金の出入り
身近な例でいえば、お金の出入りも正の数・負の数の例でした。
あなたが500円持っていて、300円のジュースを買ったとします。
このとき「−300円」とすれば、残りは「+200円」になります。
もし友達からさらに200円借りたら「−200円」と表すこともできます。
◯ 高さや深さ
建物や、標高なども正の数・負の数が使われているものの1つです。
地上を0メートルとしたとき、富士山の高さは+3776m、海の底なら−1000mなどと表します。
このように、正の数・負の数は「上下」「増減」「出入り」などを表すときに便利な数なのでした。
数直線でイメージしてみよう
正の数・負の数の簡単な復習を終えたところで、少しずつ計算問題の考え方に移っていきます。
これから計算問題について考えていきますが、正の数・負の数の計算を考えるとき、便利なのが数直線です。
数直線とは、0を中心にして右がプラス、左がマイナスになるように一直線に並べた図でした。
この直線上で、「数を足す=右に進む」「数を引く=左に進む」と考えると、計算が視覚的にイメージしやすくなります。
数直線を用いたイメージがどのくらい有効かをいくつかの例を用いて示していきます。
例1:3+(−2)
- まず+3の位置に立ちます(右に3つ進んだ地点)。
- そこから「−2」、つまり左に2つ戻ります。
- 結果は「+1」の位置になります。
例2:−4+6
- −4の位置(左に4)からスタート。
- +6、つまり右に6進む。
- −4 → −3 → −2 → −1 → 0 → +1 → +2 → 答えは「+2」
このように、数直線を使うと、目で見て確認できるため、特に計算ルールに慣れるまではとても効果的です。
足し算の基本ルールをマスターしよう!
ここまで数直線を使った正の数・負の数の計算の考え方を解説してきました。
では、実際に正の数・負の数の計算問題を取り組んできます。
まずは、正の数・負の数の足し算から始めます。
正の数と負の数を使った足し算には、大きく分けて2つのパターンがあります。
【パターン1】符号が同じ場合
最も基本的な符号が同じ時の計算から始めていきます。
たとえば (+5)+(+3) や (−4)+(−2) のように、どちらも正、またはどちらも負のときです。
この場合は、絶対値(符号を除いた数)を足して、元の符号をつけるだけです。
式 | 絶対値の和 | 答え |
---|---|---|
(+5)+(+3) | 5+3=8 | 8 |
(−4)+(−2) | 4+2=6 | −6 |
絶対値の計算になると、算数の足し算と変わらないので、問題なく計算が進められると思います。
【パターン2】符号が異なる場合
次は符号が異なる場合の足し算を考えていきます。
たとえば (+6)+(−4) や (−7)+(+3) のように、正と負が混ざっているときです。
この場合は、絶対値の大きい方から小さい方を引いて、大きい方の符号をつけるのがルールです。
どういうことを言っているのか、上記の例で計算してみます。
式 | 大−小 | 符号 | 答え |
---|---|---|---|
(+6)+(−4) | 6−4=2 | + | 2 |
(−7)+(+3) | 7−3=4 | − | −4 |
このルールに慣れておくと、引き算との違いが少なくなり、よりスムーズに計算できます。
引き算の考え方:実は足し算に変換できる!
正の数・負の数の足し算の考え方は上記で解説した通りです。
ここまでの段階では、あまりつまづく人は多くないのが、塾の講師をしていた時に筆者がいただいた印象です。
ここからは、引き続き引き算の考え方に移っていきます。
引き算での山場は、「マイナスを引く」という計算です。
「マイナスを引く」という動きがイメージしにくいと感じるかもしれません。
でも安心してください。
このようなときの考え方は、引き算を足し算に変換するという工夫があります。
「$a−b$」という式は、「$a+(−b)$」と考えてOKです。
これがどういうことか例題を見ていきましょう。
例1:7−2
これは普通に「+7+(−2)」と考えて、答えは「+5」
もしくは正の数同士の引き算なので、算数の引き算と同じような考え方でも問題ありません。
例2:3−(−4)
この問題は上記で示した、引き算を足し算に変えるという考え方をします。
実際に行うと下記のようになります。
「3+(+4)」と読みかえて、答えは「+7」になります。
例3:−5−2
この式も例2と同じく、引き算を足し算に変換して考えます。
すると、「−5+(−2)」なので、答えは「−7」
この変換ルールが使えるようになると、「足し算と引き算の混在した式」もすっきり理解できます。
練習問題で理解をチェック!
この段階でここまでの学習内容を計算問題で振り返っていきます。
学んだルールをもとに、以下の問題にチャレンジしてみましょう。
問題(足し算)
- (+4)+(+3)
- (−2)+(−5)
- (+6)+(−4)
- (−7)+(+2)
2.-7
3.2
4.-5
問題(引き算)
- (+8)-(+5)
- (−3)-(+4)
- (+6)-(−2)
- (−5)-(−1)
2.-7
3.8
4.-4
繰り返し練習することで、パターンに慣れてきます。
「数直線で考える」→「ルールで処理する」→「頭でスムーズに計算する」という流れを意識しましょう。
足し算と引き算が混ざった式の計算方法
前半で学んだように、引き算は足し算に変換してしまうと、計算が簡単になります。
その応用として、足し算と引き算が混ざった計算も、「全部足し算に変換してから処理する」という方法で統一的に対応できます。
実際に例を使って処理方法を見ていきましょう。
例1:(+4)−(+3)+(−2)
(+4)+(−3)+(−2)
+4-3-2=−1
例2:−6−(−3)+(+5)
−6+(+3)+(+5)
−6+3=−3、−3+5=+2
コツ
- 必ず引き算を「足し算に変換」してから左から順に計算。
- 符号のついた数に直して並べるとミスが減る。
括弧(かっこ)を含む計算のしかた
上記では、足し算と引き算が混ざった難易度が上がった計算を実際に行ってみました。
ここでは、もう少し難易度を上げて、括弧がある計算の場合を見ていきます。
計算処理の手順は、算数で計算した時のように、まず先に括弧の中の計算をした後に、全体の計算を行うという流れで進めていくことを守るようにしていきましょう。
例1:(+6)−{(+3)+(−5)}
- カッコの中:(+3)+(−5)=−2
- 外側の式:(+6)−(−2) → 6+2=+8
例2:(−5)−{(−3)−(−2)}
- 中のかっこ:(−3)−(−2) → −3+2=−1
- 外側:−5−(−1) → −5+1=−4
文章題での応用:正の数・負の数は日常にあふれている!
ここまでで、計算問題においての計算の処理方法について解説していきました。
解説した内容をしっかりと理解できていれば、どんな問題が出題されても冷静に対応できるかと思います。
ここからは、文章題にして、日常の場面にどのように活かされているかを見てみましょう。
気温の変化
ある日の朝の気温が−3℃、昼には4℃まで上がったとします。このとき気温の変化は?
+4−(−3)=+4+3=+7℃
気温は7℃上昇したといえます。
お金の収支
おこづかい帳の記録
・所持金:500円
・お菓子を買った:−300円
・おばあちゃんからもらった:700円
・文房具を購入:−200円
合計=+500-300+700-200=+700円
高低差
登山で、標高1,200mの山頂から−200mの谷底まで降りた場合、高低差は?
−200−(+1200)=−1400m
高低差は1,400m
このように、「増えた」「減った」「上がった」「下がった」という変化を表す場面では、正の数・負の数の引き算・足し算が役立っています。
よくあるミスとその対策法
計算問題や文章題の例題を通して、計算方法や考え方については解説してきました。
ただ、実際に問題を解き進めると、ミスが起こることはあります。
計算ミスをしてしまうことは決してダメなことではありませんが、その傾向を知っておき、取れる対策があるのであれば、しておくに越したことはありません。
そこで、正の数・負の数の計算でよく見かける、ミスをいくつか紹介しておきます。
【ミス1】符号の変換を忘れる
最も多いミスは符号の間違いです。
引き算を足し算に直さずに進めてしまい、誤答になるというケースがよく見かけます。
【ミス2】符号のついた数を読み違える
また、符号を勝手に読み替えてしまって、ミスをするケースも見受けられます。
例えば、(−3)+(+5) を「5−3」などと読んでしまうということです。
【ミス3】かっこの中の計算を後回しにしてしまう
また、正の数・負の数の計算に集中してしまうがあまり、算数の計算の優先順位をミスしてしまうケースもあります。
練習問題:混在した式の攻略
ではここで、足し算と引き算が混ざった計算の練習をしていきます。
以下のような混在式を解いてみましょう。丁寧に符号を確認しながら進めてください。
【練習1】
- (+6)−(+3)−(−2)+(−5)
- (−7)+(+4)−(−1)−(+2)
- {(+2)−(−3)}+{−4−(+1)}
- −3−(−6)+(−4)−(+2)
2.-4
3.0
4.-3
正の数・負の数を使いこなすための学習法
最後の解説は正の数・負の数の計算を高い精度で進めていけるような勉強方法をお伝えしておきます。
正の数・負の数の足し算・引き算を本当に身につけるには、以下のステップを踏んで学習するのが効果的です。
ステップ①:数直線でイメージを掴む
まずは、数直線を使って計算のイメージをつけていくことをおすすめします。
初学者はとにかく「目で見て」「動きを追って」理解するのが近道です。
数直線を使って、プラスは右、マイナスは左と動かす感覚をまず定着させましょう。
ステップ②:ルールの「意味」を理解して覚える
次の段階は、数学のルールを理解しながら解き進めていくことです。
「絶対値を比べる」「符号は大きい方のを使う」といったルールは、暗記ではなく意味とパターンを理解して覚えます。
ステップ③:自分の言葉で説明してみる
さらに、自分の言葉で説明できるかを確認することも知識を理解しているかを確認するのに効果的です。
「+3+(−5) は、3から5を引くってことだよ」
「−4−(−2) は、−4からさらに2を戻るから、−2になる」
このように自分の言葉で説明できるようになると、本当に理解できている証拠です。
ステップ④:ミスから学ぶ
そして、正の数・負の数に限った話ではありませんが、自分のミスはしっかりと振り返るようにしましょう。
間違えたときに「なぜそうなるのか」を必ず確認し、次に同じパターンが出たら迷わないようにします。
これが実力アップの一番の近道です。
ステップ⑤:日常の中で使うチャンスを探す
最終的には、日常生活の中で正の数・負の数がどのように使われているのか、実際にどう使えるのかを考えてみることをおすすめします。
「体温が昨日より−0.6℃下がった」
「先月の赤字が−15万円だった」
など、身の回りにある情報を数値化して考えてみると、正の数・負の数の計算に慣れるきっかけになります。
学習のポイント
最後に、今回学んだ内容の重要ポイントを振り返ります。
正の数・負の数の意味
- 正の数=0より大きい数
- 負の数=0より小さい数
足し算のルール
- 同じ符号:絶対値を足して、符号はそのまま
- 異なる符号:絶対値の大きい方から小さい方を引いて、大きい方の符号をつける
引き算は「足し算に変換」して処理
- $a−b$ → $a+(−b)$のように必ず変換する
足し算と引き算が混ざった式の攻略法
- すべて足し算に変換してから、左から順に処理
- 符号のある数をセットで読み込むのがミス防止のコツ
- 括弧の中から先に計算するなどの計算のルールを守る
視覚化が大切
- 数直線や図で確認することで理解が深まる
- 複雑な式や文章題も「動き」として捉えるとわかりやすい
練習→確認→応用の流れが大事
- 簡単な問題で型を覚える
- 自分で説明できるようにする
- 応用問題や実生活で使ってみる
まとめ
このページでは、正の数・負の数の足し算と引き算について計算の基本から日常の応用まで網羅的に解説してきました。
絶対値の考え方や数直線を使った計算のイメージなど、計算を間違えないための工夫は、ここで解説してきたように様々あります。
また、計算に慣れるまでは、イメージしたり符号の変換など計算自体は時間がかかるかもしれません。
ですが、テストや試験などで間違えないためにも、今はコツコツと丁寧に知識やスキルを身につけていきましょう。
正の数・負の数の足し算と引き算がこれからの数学の学習の土台になることは間違いないので、焦らず確実な知識をつけていきましょう。
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