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■絶対値は「数直線上で原点からの距離を表す値」。
■絶対値の大小関係は、数の大小関係とは違う場合がある。
■0の絶対値は0。
中学数学で正負の数の学習のすぐ後に「絶対値」という考え方を学習します。この絶対値という考え方は、慣れてしまえば難しく感じることはありませんが、学習当初は非常に理解するのが難しい部分です。
そのため、絶対値を理解し切らないまま学習を進めた結果、正負の数の計算で躓き、その後の数学の問題でついていけなくなったという人も少なくありません。
また、この絶対値の考え方が理解できないままいると、受験勉強の時期に中学数学をもう一度全部学習し直すことになるので、とても受験勉強で効率がいいとは思いません。
なので、絶対値の学習は中学数学でまずしっかりと理解できるまで復習することが大事です。
ここでは、絶対値の考え方について説明していきます。
絶対値のイメージ
学校で初めて絶対値について学習した時に、学校の先生や教科書にはどのように教えてくれたり、書いてあったりしたでしょうか?
絶対値のイメージについては様々な教え方がありますが、一般的には以下のような教え方をしています。
絶対値:数直線上で原点からの距離を表す値
学校でいきなりこのように教えてもらったり、教科書に書いてあってもよく分からないと感じますよね。
上記の教え方で分からないと感じる点は4つあります。
- 数直線とは?
- 原点とは?
- 原点からの距離とは?
- 値とは?
筆者は中学数学を初めて学習した時、何も疑問に持たずにこの部分を学習しましたが、今思えばこれらの疑問を持たない方がむしろ学習自体は浅い学習をしていたのかもしれません。
ここから、まず上記の4つの疑問について解説していきます。
数直線とは?
数直線とは、「直線の上に基準の点(原点)を決め,この点を0とし、単位の長さ(1にあたる長さ)を適当に決めて,その直線上に数を目盛ったもの」とされています。
数直線の概念は実は小学校の算数で学習している内容ですが、小学3年生ぐらいに習う内容なので学習したことを忘れてしまっている場合があります。
絶対値の学習をする上で数直線が利用される理由は、数直線の特徴として、数の大小の比較が視覚的にしやすいという点があるためです。
後述しますが、絶対値は「値の大小」を比較する問題も出てくるため、値の大小を比較する前の段階の、「数の大小」の比較をする際に非常に便利になります。
原点とは?
原点とは、上述の数直線上の基準とする点のことです。
そのため、数直線を描く際は、まずこの原点を先に決める必要があります。
そして、原点は数直線上のどこに設定してもいいので、自分が「ここを原点とする」とすれば、そこが原点となります。
原点からの距離とは?
次に原点からの距離について、ここの考え方が絶対値を考えていく中で重要になってくるポイントになります。
数直線で原点を決めた後、任意の点までの距離を設定します。
※(・・・単位の長さ(1にあたる長さ)を適当に決め・・・)の部分です。
ここで決めた原点から1までの大きさを、「原点からのここ(1の点)までを、距離1とする」ということです。
なので、距離1を2倍、3倍していくと、その距離も距離2、距離3となるわけです。
値とは?
最後に値について、これを考えるのは少し難しいですが、ここをはっきりイメージできるようになると今後の数学学習がよりスムーズになると思います。
値を考える上、比較して考えることをおすすめしているのは、数との違いです。
中学数学を学習する段階で、数と値の違いをイメージしているもしくは言語化できる人は少ないのではないでしょうか?
ここから説明することはあくまで、筆者がこれらをどのように区別しているかなので、参考程度に考えてみてください。
まず結論から説明すると、数と値の違いは以下のように考えています。
数:大きさを持たない文字。量や長さ、時間、大きさなどを表すための道具。
値:数と組み合わせて大きさを持たせた文字。
上記の違いのイメージはつくでしょうか?
例えば、数と言えば、「1」や「30」などを表しますが、この文字自体に大きさはないです。
「いや、30は1より大きいだろ。」と考えている人は、無意識に1や30といった数に大きさや量といった大小比較ができるものを当てはめて考えているものと推定されます。
ですが、1や30などの数自体には大きさはありませんよね?
対して値は、数と組み合わせることで初めて意味が出てきます。1ℓとか30分など、量や時間などを表す単位をつけることで大小比較ができるものになります。
ここで、数直線の話に戻ると、数直線も「値」ということで、原点からの距離が1と、原点からの距離が2というような言い方をしています。距離なので小学校の算数では「cm」などの単位があったと思いますが、中学数学では単位は何でもいいのです。重要なのは、数直線上の値なので、大小比較ができて、その比較内容は「原点からの距離」ということです。
絶対値の大小比較
ここまで絶対値について、説明してきましたが、改めて大事なポイントは
○絶対値は数直線上の原点からの値
ということでした。これを念頭に実際に問題を考えていきましょう。
例題
次の数を数直線上に表せ。
5 -2
次の数の絶対値を表せ。
4 -3
-3:3(負の数なので、符号を外して答える。)
次の数のどちらが絶対値が大きいか?
2 -5
絶対値は原点からの距離のこと。
2と-5をそれぞれ数直線上で示すと以下の図の通りになる。
ここで、原点からの距離が遠い方が絶対値が大きくなるため、答えは-5
実際に問題を解きながら考えると分かりやすいですが、絶対値の大小関係の問題については、原点からの距離でどちらが原点からより離れているかを考えることになります。ここでポイントになるのは、負の数同士の比較をする時と正の数と負の数の比較をする時です。
正の数同士の比較の時はほぼ問題なく、数の大きさで判断できると思います。ですが、負の数同士の比較になると、間違えてしまう人が出てきます。
負の数同士の比較で間違えてしまう原因は、負の数はマイナスの値が大きくなるほど、小さくなるためです。
例えば、-2℃と-5℃だと-5℃の方が低い値、小さい値として認識していますが、何度も繰り返しますが、絶対値は数直線上の原点からの距離を表す値です。そのため、負の数同士の比較では、マイナスの値が大きいほど、絶対値は大きくなります。
また、正の数と負の数の比較でも同様のことが言えます。
これらの間違いを防ぐためにも、絶対値は数直線上の原点からの値という認識をしっかりと持つことが大事になってきます。
0の絶対値
次に0の絶対値について考えていきます。
何度も振り返りますが、絶対値は原点からの距離を表す値です。
このように設定すると、原点(0)の絶対値はどうなるのか?という疑問が湧いてきます。
その疑問に対する結論は以下の通りです。
○0の絶対値は0。
とてもシンプルな解答になりますが、よく考えてみると至ってその通りの解答だと思います。
これがイメージしにくい人は実生活に落とし込んで考えてみましょう。
例えば、自宅から学校までの距離は600mだとしましょう。
では自宅から自宅までの距離は何mでしょうか?
この答えは0mですよね?
今の例では、自宅から学校までを距離で考えました。そして基準となる原点は自宅に置いていました。なので、基準となる自宅から自宅までの距離は、いわば原点から原点までの距離になるため、0mとなったわけです。
同様の考え方を数直線上でも行います。
数直線上の原点から、同じ数直線上の原点までの距離は0なので、原点(0)の絶対値は0となります。
絶対値記号の表し方
ここまで絶対値についての説明を行ってきましたが、数学では絶対値を表す記号があります。
絶対値の記号は以下のように表します。
例:3の絶対値 → |3|
-4の絶対値 → |-4|
上記のように絶対値記号は表されますが、例のように絶対値記号だけで表されても、「これは絶対値を表しているんだ。」とすぐに認識できるようにしておきましょう。
実際の問題では、どのように問題が出されるかは分かりませんので、この記号もしっかりと押さえましょう。
まとめ
絶対値の考え方を詳しく解説していきましたが、ここで触れてきた考え方は今後の数学学習の中ではずっとイメージとして持っておけるようにしましょう。
上述もしましたが、この絶対値という考え方で躓いてしまったら、中学の数学でも高校の数学でもついていけなくなってしまいます。
このページで説明したことがすぐに理解できる内容ではないかもしれませんが、何度もこの分野を繰り返し学習して、自分の中に知識として落とし込んでいけるようにしましょう。
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