前回の学習内容では比例関係についての基本的な考え方やグラフの学習を進めてきましたが、比例関係の学習内容でもう1つ重要な関係性に「反比例」というものがあります。
そこで今回は、2つの数の間にある関係性として、ある数の増加分(減少分)に合わせて、もう一方の数は同じだけ減少(増加)する関係を表す「反比例」という関係について学習をしていきます。
反比例の考え方は、比例の関係と比較しながら学習を進めていくと、内容の理解が深まりやすいので、丁寧に学習を進めていきましょう。
比例の次に学ぶ「反比例」とは?
比例に続いて学習する「反比例」はとても重要なテーマの1つです。
前回の学習で扱った「比例」が「一方の数が増えると、もう一方も増える」という関係だったのに対し、詳しくは後述しますが、反比例はその逆の関係になります。
たとえば、同じ仕事量をこなすとき、作業する人の数を増やせば時間は短くなり、作業人数を減らせば時間は長くなります。
これはまさに反比例する関係の一例です。
ざっと概要をせつめいしたとこで、ここからは、「反比例とは何か」から「反比例のグラフの特徴」までを順を追って解説していきます。
反比例とはどういう関係?
まずは、反比例という言葉の意味から確認しましょう。
反比例とは、2つの変数(たとえば$x$と$y$)の積が常に一定である関係をいいます。
数学的には以下のような式で表されます。
$y=\frac{a}{x}$
このとき、$a$は比例定数と呼ばれる一定の数です。
比例定数は反比例でも同じ言葉!
ここで、比例の時に登場した比例定数という言葉が出てきましたが、比例関係のときと同じく、反比例の式でも「比例定数」という言葉が使われます。
ですが、式の形は全く異なります。
復習になりますが、比例は「$y=ax$」の形ですが、反比例は「$y=\frac{a}{x}$」です。
似ているようで、まったく異なる変化の仕方をすることに注意しましょう。
反比例の具体例でイメージをつかもう
ここまでの説明は、抽象的な定義だけだったので、少し分かりにくいかもしれません。
なので身近な例を通して、反比例の関係をイメージしてみましょう。
【例1】長方形の幅と高さ
面積が一定の長方形を考えてみましょう。
面積が20$cm^2$と決まっているとき、幅を2cmにすれば高さは10cm、幅を4cmにすれば高さは5cmになります。
幅と高さをかけるといつも20$cm^2$になる、つまり反比例の関係にあります。
【例2】仕事量と作業時間
次に仕事量と作業時間の例を見てみます。
ある工場で一定の仕事を終えるのに、8人で作業すると12時間かかります。
作業人数を2倍の16人にすれば、時間は半分の6時間になります。
このように、人数と時間が反比例している関係です。
【例3】買い物の予算と購入できる数量
最後の例は買い物の例です。
同じ1,000円の予算で、1個200円のものを買えば5個買えます。
もし1個250円の商品を選べば4個しか買えません。
単価が高くなるほど買える数は減る。
これも反比例の一つの例です。
このように、日常の中にも反比例する関係はたくさんあります。
数式で見る反比例の特徴
反比例の具体例を見てきたので、反比例のイメージがついてきたと思います。
ではこのタイミングで反比例の定義式を詳しく見ていきたいと思います。
数式:y=a/xの意味を深掘り
反比例の定義式は$y=\frac{a}{x}$という式でした。
この式では、$x$が増加することで$y$は減少し、逆に$x$が小さくなると$y$は大きくなります。
つまり、一方が増えると他方が減る、これが反比例です。
また、この式は以下のように変形できます。
$x \times y=a$
この形で見ると、「$x$と$y$の積が常に一定」ということが明確にわかります。
反比例のグラフとは?特徴を詳しく解説!
ここまでの説明で、反比例の定義式についての基本はお話してきました。
比例の学習でも定義式を学習した後にグラフの話をしていきましたが、反比例でもグラフは学習していきます。
反比例の関係をグラフに表すと、直線にはならず、独特な曲線(双曲線)になります。
ここからは、グラフの特徴について解説します。
反比例のグラフの形は「双曲線」
まずグラフの形を見ていく前に、グラフの名称を押さえておきましょう。
反比例のグラフは「双曲線」と呼ばれるグラフになります。
このグラフの特徴して、$y=\frac{a}{x}$ のグラフは、左右対称の2つのカーブに分かれます。
覚えておきたい3つの特徴
双曲線にはいくつか重要な特徴があるので、下記の3つは必ず覚えるようにしましょう。
- グラフは原点(0,0)を通らない
原点を通るのは比例のグラフです。
反比例では$x = 0$が定義できないので、原点を通過しません。 - $x$軸と$y$軸には近づくが交わらない
これを「漸近線(ぜんきんせん)」と呼びます。
グラフは、$x$軸や$y$軸にどんどん近づいていきますが、決して接することはありません。 - $a$の符号によってグラフの向きが変わる
- $a > 0$ のとき:グラフは右上と左下に
- $a < 0$ のとき:グラフは左上と右下に
実際のグラフを確認
反比例のグラフは特徴が多いということが分かったところで、実際にどのような形になるかを見ていきます。
このグラフを見てみると、上記で説明したような3つの特徴があることが確認できます。
また、後述しますが、比例定数が負の数になる場合、下記のような赤色のグラフになります。
aの値による変化も見ておこう
- $y=\frac{1}{x}$
- $y=\frac{2}{x}$
- $y=\frac{5}{x}$
実際に上記3つの式をグラフに反映させると分かりますが、比例定数$a$の絶対値が大きくなると、グラフは軸から遠ざかるようになります。
視覚的にも$a$が数式にどのような影響を与えているかが分かります。
比例定数の求め方をマスターしよう
ここまで反比例の定義式やグラフを見てきました。
ここからは比例のところでも学習した比例定数を求める方法について見ていきます。
反比例の式を作るには、まず比例定数$a$を求める必要があります。
反比例の場合の比例定数$a$の求め方はとてもシンプルです。
基本の公式
$a=x \times y$
この式がどのように使われるかを例で見てみましょう。
具体例
$x=3$, $y=4$のとき、
$a=3 \times 4=12$ → よって、式は $y=\frac{12}{x}$
このように、1組の$(x, y)$がわかっていれば$a$はすぐに求まります。
2組の点がわかっているときは、どちらでも計算可能で、得られる$a$は同じになります。
反比例のグラフを自分で描いてみよう
上記では、反比例のグラフの特徴を学びました。
ここからは、実際にグラフを自分で描く方法を丁寧に解説していきます。
反比例のグラフは、比例とちがって直線ではありません。
最初は戸惑うかもしれませんが、ステップを押さえれば必ず描けるようになります。
グラフ作成のステップ
では実際にグラフを作成するステップをみていきます。
大きく4つのステップで行っていくので、実際に作成しながら見ていきましょう。
ステップ①:比例定数aを確認する
まずは、式の形を確認しましょう。
たとえば、$y=\frac{12}{x}$ という式なら、比例定数$a=12$です。
ステップ②:xに適当な値を代入してyを求める
続いて、$x$の値に整数や小数を代入して、対応する$y$を計算します。
例:$x=1,2,3,4,6,12$ → $y=12,6,4,3,2,1$
また、$x=0.5,-1,-2$なども加えると、左右対称のグラフが描きやすくなります。
ステップ③:点を座標平面に打つ
ステップ2で求めた$(x, y)$の座標を、ノートやグラフ用紙に正確に打っていきましょう。
ステップ④:なめらかな曲線でつなぐ
最後にすべての点を、折れ線ではなく、なめらかな曲線で結びましょう。
反比例のグラフは双曲線なので、曲線になることがポイントです。
グラフを描くときの注意点
上記のステップに沿ってグラフを書いていきますが、実際にグラフを描くときは下記の注意点に気を付けて書いていきましょう。
①x = 0は代入してはいけない
反比例の内容というより数学全般の注意点ですが、反比例の式では、$x=0$ を代入してはいけません。
なぜなら、$y=\frac{a}{x}$ の形では、$x=0$ のときに分母が0になってしまうからです。
数学では、「0で割る」ことは定義されていません。
そのため、グラフも$x=0$の位置(つまり$y$軸)には点を打てないということになります。
②点が左右対称になることを意識しよう
反比例のグラフは、原点の周りで左右対称(対称性がある)な形になります。
$x$が正のときのグラフと、$x$が負のときのグラフを両方描くことで、完全な双曲線が完成します。
反比例のグラフの読み取り方と問題への応用
ここまでで、反比例の式やグラフの描き方を説明してきました。
ここからは、実際の問題でグラフを読み取ったり、式を使って値を求めたりする方法を確認していきます。
グラフから式を作る方法
まずはグラフから反比例の式を作る方法です。
反比例のグラフから式を求めることもできます。
数式を求めるポイントなのは、「グラフ上の1点の座標がわかれば式が作れる」ということです。
例題:点(4, 3)を通る反比例の式は?
式の形は $y=\frac{a}{x}$です。
この点を使って、$3=\frac{a}{4}$ と考えます。
両辺に4をかけると $a=12$。
したがって、式は、
$y=\frac{12}{x}$
とわかります。
複数の座標が与えられているときも、1点使って比例定数$a$を出せばOKです。
確認のために、他の点もその式に代入して一致するかをチェックすると安心です。
反比例の文章題を解くコツ
グラフから数式を求める方法が分かったところで、文章問題の考え方に移っていきます。
反比例の関係を使った文章題では、「人数と時間」「長さと幅」などがよく出てきます。
解き方の基本ステップ
反比例の文章問題の解き方は下記4つのステップで進めていくとスムーズに解き進められます。
- 反比例の関係かを見極める
例:人数が増えると時間が減る→反比例 - 比例定数$a$を求める
例:8人で12時間 → $a=8×12=96$ - 式を立てる
→ $y=\frac{96}{x}$($x$が人数、$y$が時間) - 条件を代入して求めたい値を出す
例題で練習してみよう
上記のステップで実際の問題が解けるか見ていきます。
例題①
10人で15時間かかる仕事があります。この仕事を6時間で終わらせるには、何人必要ですか?
- ステップ①:$a=10×15=150$
- ステップ②:$y=\frac{150}{x}$ → $y=6$
- ステップ③:$6=\frac{150}{x}$ → $x=\frac{150}{6}=25$
答え:25人必要
この問題では反比例かどうかを確認していませんが、おおむね4つのステップで解答まで進めることができています。
よくあるミスと対策
ここで、反比例の問題のよくあるミスとその対策を押さえておきましょう。
比例と反比例を混同してしまう
比例は「$y=ax$」で直線。
反比例は「$y=\frac{a}{x}$」で曲線。
式の形で混同しないように注意しましょう。
x=0を代入してしまう
前述のとおり、分母が0になると式が成り立たないため、$x=0$は代入してはいけません。
成り立たない理由も説明させていただいたので、間違えてしまう人は改めてしっかりと確認しておきましょう。
理科や社会、日常生活での反比例の活用
ここまでは、数学における反比例の内容でしたが、反比例の考え方は数学だけでは収まらず様々なところで活用することができます。
具体的には反比例の考え方は、数学の枠を超えて理科や社会でも重要な役割を果たしています。
いくつか例を見ていきましょう。
理科での活用:ボイルの法則(気体の体積と圧力)
気体の状態変化を扱う「ボイルの法則」では、温度を一定にしたとき、気体の体積と圧力が反比例することがわかっています。
圧力 × 体積 = 一定
これはまさに反比例の関係です。
ボイルの法則は高校の物理で学習するので、もし理系の進路を検討している学生さんは頭の隅に置いておくといいかもしれません。
社会や経済での応用例
社会や経済での活用例は多数あるので、イメージしやすい代表的なものを紹介します。
- 商品の価格と売れる数の関係(価格が高くなると、買う人が減る)
- 作業量と人数、時間のバランス
- 交通:速度と移動時間の関係(速いほど時間は短くなる)
こうした例からもわかるように、反比例は生活の中でも頻繁に使われています。
実践応用:反比例と比例を組み合わせた問題
反比例の理解が深まったら、比例との違いを意識しながら複合的な問題にも挑戦してみましょう。
比例と反比例の見分け方
問題を取り組む前に、改めて比例と反比例の違いを確認しておきましょう。
- 比例 → $y=ax$(直線グラフ、原点を通る)
- 反比例 → $y=\frac{a}{x}$(双曲線グラフ、原点を通らない)
どちらの関係かを文章や表から読み取り、正しい式に当てはめることが重要です。
例題①:関係を見分ける
では早速問題を見ていきます。
まずは2つの数の関係を見て、比例か反比例化を見分ける問題です。
$x$ | $y$ |
---|---|
1 | 3 |
2 | 6 |
3 | 9 |
4 | 12 |
この関係は、$y=3x$となっており比例です。
次に、以下の表を見てみましょう。
$x$ | $y$ |
---|---|
1 | 12 |
2 | 6 |
3 | 4 |
4 | 3 |
この関係は $x \times y = 12$ → 反比例です。
複合問題の例:反比例+比例
この問題は、少し応用が効いている問題になります。
力試し的に挑戦してみてください。
例題
ある長方形の面積は36cm²です。縦の長さ$x$cmに対して横の長さ$y$cmは反比例します。また、その長方形の周の長さを$z$cmとします。$z$を$x$の式で表してください。
解き方
複合問題なので、難しさを感じるかもしれませんが、1つ1つ要素を分解して考えていくと、下の3つのステップで解くことができます。
- 面積より:$xy=36$ → $y=\frac{36}{x}$(反比例)
- 周の長さは:$z=2(x+y)$
- 式に代入:$z=2(x+\frac{36}{x})$
よって答えは
$z=2{(x+\frac{36}{x})}$
このように、反比例の式を他の式に代入して複雑な問題を解く力も求められます。
反比例のよく出る入試問題パターン
難しい問題にも挑戦してみたところで、入試でよく問われるような問題も見ておきたいと思います。
入試で頻出の「反比例」問題には、ある程度決まったパターンがあります。
ここでは、その中でも特に出題率の高い形式を紹介し、解き方を解説します。
パターン①:1点から式を求める
問題
反比例のグラフが点(6, 5)を通っています。このグラフの式を求めなさい。
解き方
- $y=\frac{a}{x}$ の形に当てはめる
- $5=\frac{a}{6}$ → $a=30$
よって答えは
$y=\frac{30}{x}$
パターン②:文章題で人数・時間・作業量の関係を扱う
問題
Aさんが1人で作業すると12時間かかります。同じ作業を4人で行うと、何時間かかるでしょうか?
解き方
- $人数 \times 時間 = 一定$(反比例の特徴)
- $1 \times 12 = a$ → $a = 12$
- $4 \times y = 12$ → $y = 3$
よって答えは、
3時間
パターン③:式とグラフの照合
問題
以下のうち、$y=\frac{8}{x}$ のグラフと一致するものを選びなさい。
- A:原点を通る直線
- B:$x$が大きくなると$y$が小さくなる曲線
- C:$x=0$のとき$y=8$
正解: B
(反比例の特徴を理解していれば正しく判断できます)
このような形式の問題が多く出題されます。
入試の問題は基本的な事項を問われる問題が多いので、まずは反比例の基本的な特徴などに重点を置いて知識を増やしていきましょう。
反比例に関するよくある質問(Q&A形式)
最後に、反比例を学ぶ中で多くの人が感じる疑問をまとめて解説します。
まとめ
このページでは、比例の関係に続いて反比例の関係について解説をしていきました。
反比例の問題はグラフも特徴的な上、注意しなければならないことも多く、ケアレスミスが出やすい分野になっています。
そして、ケアレスミスが増えると、点数が伸び悩んだり続く問題で考え方は合っているのに、解答が違うということも出てきます。
そうなるととてももったいないので、ケアレスミスがないように注意して学習を進めていきましょう。
ですが、丁寧に学習を進めていき、確かな知識を身につけていくようにしましょう。
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