これまでの数学の学習で、文字で数式を計算する方法や考え方は少しずつ理解が深まっていると思います。
前回のページでも文字式の計算は今後の数学の学習において大切になるとお話しましたが、新しい学習単元では、早速文字式を使って実際の計算を行っていきます。
それが、このページで解説していく「一次式」の計算と「一次方程式」になります。
似たような言葉ではありますが、この2つの言葉は明確に違いがあります。
今の段階でその違いは分からなくても問題ありません。
このページで両社の違い、それぞれの計算方法、考え方や意味をしっかりと解説していきます。
一次式とは何か?意味と特徴をしっかりおさえよう
まず始めに一次式とはどういうものかを解説していきます。
一次式の定義
「一次式」とは、文字(変数)を含む式のうち、文字の指数が1である式のことです。
たとえば、次のような式が一次式にあたります。
$2x+3$
$-5y+7$
$x-8$
これらの式に共通するのは、「文字の指数が1」であることと、式全体が足し算や引き算だけで構成されていることです。
ポイント
- 「一次」とは「文字の指数が1」の意味。
- 二次式や三次式などの学習へとつながる、最も基本的な文字式。
一次式の構成要素
一次式について、もう少し深堀してみていきます。
一次式は、主に次の2つの部分から成り立っています。
- 文字項:文字を含む部分(例:$2x$、$-5y$)
- 定数項:数字だけの部分(例:3、7)
例えば、$2x+3$ という一次式では、
文字項 → $2x$
定数項 → $3$
になります。
また、文字項の中で、文字の前についている数を係数といいます。
この例では、$2x$の「2」が係数です。
係数が1の場合は省略され、$x$とだけ表現されます。
一次式はなぜ大切か?
上記で、一次式の定義や構造を解説してきました。
ここで、なぜ今後の数学の勉強において一次式が重要になるかを改めて説明しておきます。
結論からお話すると、一次式は中学数学だけでなく、今後の数学全体の土台となる考え方になるからです。
例を挙げると下記のようなものを考えるときの基礎になります。
- 数学の基礎:方程式、関数、グラフなど、すべての基本になる
- 論理的思考の第一歩:変化の量を数字で表せるようになる
- 日常にも応用:商品の価格、時速と移動距離、割引計算などにも登場
これらの具体例はこのようなものが考えられます。
例えば、定価1,200円の商品が20%引きになったときの価格を求めるには、一次式の形を使って計算できます。
このように、一次式は現実の問題にも自然と結びついているのです。
一次式の計算ルールをマスターしよう
ここまでで、一次式の基礎を解説してきました。
ここからは早速、一次式の計算方法に入っていきます。
一次式の計算に必要な基本操作
まずは、一次式の基本的な計算方法から説明してきます。
一次式の計算にはいくつかのルールがありますが、基本は3つの操作を理解していれば十分です。
1. 同類項の計算(文字や指数が同じ項をまとめる)
まずは同類項をまとめる計算を押さえましょう。
同類項とは、文字とその指数が同じ項のことです。
例えば、$3x$と$2x$、$-a$と$5a$などは同類項です。
同類項は、係数だけを足したり引いたりすることでまとめることができます。
例
$3x+2x=5x$
$4a-2a=2a$
$-7y+3y=-4y$
2. 分配法則(かっこを外す計算)
2つ目は、分配法則を正しく行い、かっこを外す処理を行います。
改めて、分配法則はかっこの前にある数や文字を、かっこの中のすべての項に掛ける計算のことです。
例
$2(x+3)=2x+6$
$a(b-c)=ab-ac$
$-3(x-2)=-3x+6$
分配法則を使うことで、式をシンプルにしやすくなり、後の計算が楽になります。
3. 正の数・負の数を含む計算
3つ目は、計算ミスが起きやすい符号の処理を丁寧に行います。
中学1年の序盤で学んだ正の数・負の数の計算は一次式の計算でも登場しますが、符号の処理でミスをしてしまうことが多いので、実は要注意しなければいけない計算です。
例
$5x-3x=2x$
$-2a+7a=5a$
$-x-2x=-3x$
符号の処理を間違えると、計算ミスのもとになるため注意が必要です。
一次式の複合計算の例
これら3つのポイントをしっかり押さえさえすれば、ここから行う一次式が複数ある計算も問題なく解き進めていくことができます。
例題:(3x+2)-(x-5)
手順
- かっこを外す:$3x+2-x+5$
- 同類項をまとめる:$(3x-x)+(2+5)$
- 答え:$2x+7$
このように、どんな計算もルールに従って1つ1つ処理すれば、解けるようになります。
一次方程式とは?一次式との違いを理解しよう
ここまでで、一次式について定義や重要性、計算問題におけるポイントを見てきました。
ここからは、このページのもう1つのテーマである「一次方程式」について見ていきます。
方程式とは
一次方程式の説明に入る前に、まずは「方程式」とはどういうものなのか、この段階で明確にしておきます。
方程式とは、「等号(=)でつながれた、左辺と右辺が等しい式」のことです。
例:$x+3=10$、$2x-5=x+7$
このように、「=」がついているものが方程式になります。
それに対して、$2x+3$のような「=」を含まないものは「式」であり、「方程式」ではありません。
この違いはここでしっかりと理解するように努めてください。
一次方程式とは?|一次式との違い
上記で方程式とはどういうものなのか解説してところで、一次方程式について考えていきます。
まず定義からですが、一次方程式とは、「一次式を使って成り立つ方程式」のことです。
より具体的には、文字の指数が1の項を含む等式を指します。
$ax+b=c$(ただし、$a≠0$)
一次式と一次方程式の違いまとめ
比較項目 | 一次式 | 一次方程式 |
---|---|---|
記号 | 等号「=」なし | 等号「=」あり |
意味 | 式の形の表現 | 両辺が等しいという関係 |
例 | $2x+3$ | $2x+3=11$ |
求めるもの | 計算結果や整理 | 未知数の値(解) |
一次方程式の意味と実用性
一次式と一次方程式の違いについて理解を深めたところで、一次方程式の意味とそれがどのように使えるのか考えていきたいと思います。
まず、一次方程式の意味からですが、一次方程式は、「未知の数を求める」ための道具です。
「$x$っていくつだろう?」という問いに対して、論理的に式を変形して解を求めるのが方程式です。
実生活での例
- 「定価の2割引で800円になった。定価はいくらか?」
- 「ある数に5を足すと12になる。その数はいくつか?」
- 「時速$x$km/hで240kmを6時間で走った。$x$の値は?」
これらすべて、一次方程式でモデル化することができます。
一次方程式の解き方を完全マスターしよう
ここまでで、一次方程式の意味やその実用性を解説してきました。
改めてになりますが、一次方程式の目的は、未知数($x$など)の値を求めることです。
そのためには、正しい手順で式を変形していく必要があります。
ここでは、未知数を正しく求めるために一次方程式を解くための基本的なステップと計算のコツをわかりやすく解説します。
ステップ①:両辺から同じ数を加えたり引いたりする
方程式の目的に沿って効率的に解答を進めていくためには、式をどんどんコンパクトにしていく必要があります。
なので、まずは、方程式の左辺(=の左側)に文字項だけを残すことを目指します。
そのために、定数項を反対側に移す操作を行います。
例題1
$x+5=12$
手順
- 左辺の「+5」を右辺へ移動させる → 符号を逆にする
- $x=12-5$
- 答え:$x=7$
この「符号を変えて反対側に動かす」操作のことを移項といいます。
移項の本来の計算としては、左辺と右辺に、左辺側の定数項が0になるような数を足すことであります。
$x+5=12$
$x+5-5=12-5$
$x=7$
という仕組みです。
毎回この過程を行うのは大変であるので、移項の仕組みがこういった計算の仕組みになっているということだけはしっかりと覚えておきましょう。
ステップ②:両辺を同じ数で割る・かける
次は係数がある場合の計算を見ていきます。
文字の前に係数がある場合は、$x$の係数を1にするように操作します。
例題2
$2x=10$
手順
- 両辺を2で割る
- $x=10÷2=5$
これは、方程式の左右に同じ操作をすることで等式のバランスを保ちつつ解く方法です。
ステップ③:符号が負のときの扱い方
最後に文字の符号がマイナスだった時の計算を行っていきます。
もし文字の前がマイナスだったら、両辺に−1をかけることで正の係数に直すことができます。
例題3
$-3x=15$
手順
- 両辺に$-1$をかける → $3x=-15$
- 両辺を3で割る → $x=-5$
このように、マイナスを扱うときは、符号ミスに注意することが大切です。
また、上記の例題では、両辺に-1をかけてから計算を進めていますが、慣れてきたら最初から-3で割って計算をすることで、時間短縮につなげることができます。
複雑な一次方程式の解き方に挑戦しよう
ここまで基本的な一次方程式の解き方を解説してきました。
解説した基本のステップを理解したら、次は移項+計算+割り算を組み合わせた問題に挑戦してみましょう。
応用例①:両辺に文字項がある方程式
まずは、両辺に文字項がある場合の計算を行ってみましょう。
例題4
$2x+7=5x-2$
手順:
- 左辺に文字項、右辺に定数項を集める → $2x-5x=-2-7$
- 同類項を整理する → $-3x=-9$
- 両辺を\$-3\$で割る → $x=3$
ポイント
- 移項は「符号を変えて反対側へ」。
- 必ず文字項は一方にまとめる。
応用例②:かっこを含む一次方程式
次はかっこがあるときの一次方程式を解いてみましょう。
例題5
$2(x+3)=x+8$
手順
- 分配法則でかっこを外す → $2x+6=x+8$
- 文字項を移項($2x-x$)、定数項を移項($8-6$) → $x=2$
このように、かっこがあっても分配法則で広げてからは通常の手順で解けます。
応用例③:分数を含む一次方程式
最後に分数が含まれているときの計算を行っていきます。
例題6
$\frac{1}{2}x+3=5$
手順
- 移項:$\frac{1}{2}x=2$
- 両辺に2をかける:$x=4$
または
- 全体を2倍して分母を消す → $x+6=10$
- 移項:$x=4$
ポイント
- 分数は両辺に掛け算して消すとスムーズ。
- 分母が複雑なときは、最小公倍数をかけて計算を楽。
よくあるミスとその防止法
ここまで一次方程式の解き方のポイントを解説してきました。
しかし、いくらポイントを押さえていたとしても、一次方程式の解き方に慣れていないと、次のような間違いがよく起こります。
なので、どんなミスが多いのか、ここで確認しておきましょう。
ミス1:移項時の符号ミス
最も多いミスは、移項した時に符号の変換を忘れてしまうというミスです。
誤例
$x+5=12$ → $x=12+5$(×)
→ 正解:$x=12-5$
対策
対策としては、移項したときは、符号を必ず変えたか確認するようにしましょう。
ミス2:分配法則を間違える
次の例も計算に慣れるまではよく見かけるミスで、分配法則をすべての項にしないというミスです。
誤例
$-2(x+3)=-2x+3$(×)
→ 正解:$-2x-6$
対策
この対策は、途中式を必ず書くようにし、一行前の数式とつじつまが合っているかを確認しながら計算を進めるようにしましょう。
ミス3:両辺に違う操作をする
3つ目はあまり見かけることはありませんが、まったく見かけないということでもないので、紹介しておきます。
誤例
$2x=10$ → $x=10-2$(×)
→ 正解:$x=10÷2$
対策
対策としては2つ目の誤例と同じく、途中式を必ず書き、一行前の数式とつじつまが合っているかを確認しながら計算を進めましょう。
練習問題(基本)
ここまでで一次方程式の計算の注意点を解説してきました。
ではここで、一次方程式の理解を深めるための練習問題をいくつか紹介します。
ノートや紙に書いて解いてみましょう。
【問題】
- $x+9=14$
- $3x-7=2x+1$
- $4(x-2)=2x+6$
- $\frac{1}{3}x+4=6$
2. $x=8$
3. $x=7$
4. $x=6$
実生活で役立つ一次方程式の考え方
ここまで、一次方程式の計算について見ていきました。
ですが、一次方程式は、ただの計算問題ではありません。
日常生活や社会の問題にも大いに役立つ考え方です。
ここからは、どのように一次方程式が普段の生活に活かされているのかを見ていきます。
買い物の値引き計算
まずは買い物の割引計算における活用例です。
問題
定価$x$円の品が20%引きで800円になった。定価はいくら?
式
$0.8x=800$ → $x=1000$
年齢に関する問題
次の例は年齢の計算の例です。
問題
ある人の5年後の年齢が、今の1.5倍だったとする。今の年齢は?
式
$x+5=1.5x$ → $x=10$
移動の速度と時間
最後の例は、移動に関する例です。
問題
240kmを時速$x$kmで6時間かけて走った。$x$は?
式
$6x=240$ → $x=40$
一次方程式を使った応用問題を解いてみよう
一次方程式の基本的な計算や日常生活における活用例は、ここまで読んでいただけたらかなり理解が進んだと思います。
改めてですが、一次方程式は、現実の問題や文章問題を解くための強力なツールです。
ここでは、この強力なツールを使いこなせるために、典型的な応用問題を取り上げ、その解き方を段階ごとにわかりやすく解説します。
年齢に関する文章題
問題
今、父の年齢は子の年齢の4倍です。5年後には父の年齢が子の年齢の3倍になります。今の子の年齢を求めましょう。
①:文字で置く
まずは問題の設定を文字で表現していきます。
子の年齢を$x$とすると、父の年齢は$4x$になります。
②:5年後の年齢を考える
次に問題の条件に合うように、5年後の年齢を表現します。
すると下記のように表現できます。
子:$x+5$
父:$4x+5$
③:等式を立てる
設定した条件で一次方程式を立てていきます。
$4x+5=3(x+5)$
④:解く
実際に解いていきます。
$4x+5=3x+15$
$4x-3x=15-5$
$x=10$
よって、答えは10歳になります。
距離・速度・時間に関する文章題
次に距離と速度、時間に関する文章問題を行います。
問題
ある道のりを、時速60kmで行き、帰りは時速40kmで戻った。往復で5時間かかった。この道のりの片道の距離を求めなさい。
①:文字で置く
まずは問題の条件にあうように文字を置いていきます。
ここでは、片道の距離を$x$kmとします。
②:時間の式を立てる
次に一次式を立てていきます。
行きの時間:$\frac{x}{60}$
帰りの時間:$\frac{x}{40}$
合計時間:5時間
③:等式を立てる
一次式を一次方程式にして計算していきます。
$\frac{x}{60}+\frac{x}{40}=5$
④:通分して整理する
通分すると
$\frac{2x+3x}{120}=5$
$\frac{5x}{120}=5$
⑤:解く
方程式が整理されたので、解いていきます。
$5x = 600$
$x = 120$
よって、120kmとなります。
学習を深めるためのポイントとアドバイス
ここまで見てきたように、一次式・一次方程式の学習は、中1の序盤で学んだ知識を総動員して解答を作っていく非常に重要な基礎の単元であることが分かったと思います。
ここでしっかりと理解しておくことで、この後に学んでいく連立方程式や関数、図形の問題にもスムーズに進めます。
そのため、ここでは学習のポイントを紹介しておきます。
ポイント1:書いて、声に出して覚える
1つ目は、数学ではありますが、計算の方法や仕組みを覚えるということです。
特に、式の変形や移項、分配法則のようなルールは、何度も声に出しながら練習すると定着が早まります。
手を動かし、ミスを繰り返しながら少しずつ覚えていきましょう。
ポイント2:自分で式を立てる練習を
2つ目は、自分で数式を組み立てられる練習を繰り返すということです。
文章題のように「自分で式を作る」力は、非常に重要です。
特に、年齢・距離・割合の問題は繰り返し練習しましょう。
「問題を読んで→式を作る→解く」という流れに慣れていくことがポイントです。
ポイント3:間違い直しは成長のチャンス
3つ目は、間違えた問題をしっかりと振り返るということです。
間違えた問題は、成長するための宝の山です。
どこを間違えたのか、なぜそう思ったのかを自分で振り返ることで、確実に力がつきます。
単に「答えだけ写す」のではなく、「手順を理解する」ことが大切です。
ポイント4:解き方を説明できるか試してみよう
最後のポイントは、説明できるか確認することです。
家族や友だちに問題を説明したり、先生役になって解説してみるのも効果的です。
人に説明するためには自分の理解が必要なので、理解が深まる最高の方法です。
まとめ
このページでは一次式と一次方程式について、定義や基本の計算、応用、日常生活における例まで幅広く解説してきました。
一次式と一次方程式は、これからも続いていく中学数学の基礎とも言える内容です。
このページで学んだことを最後にもう一度振り返っておきましょう。
- 一次式は「文字を含む計算式」で、主に変形や代入で使われる
- 一次方程式は「=がある式」で、未知数の値を求めるために使う
- 方程式の基本操作は「移項・割り算・分配法則」
- 応用問題は現実の問題を式に置き換えて解決する力を養う
しっかり理解し、練習を重ねていくことで、これから学習する連立方程式や関数、グラフといった発展的な内容にも余裕をもって対応できるようになります。
そのためにも、日々の学習をコツコツと行い、学習した知識を確実に自分のものにできるよう努力していきましょう。
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