目的に応じた文字式の式変形〜より使いやすい形にする工夫〜

中学数学

これまで文字式について1年生のときから様々な内容を学習してきました。

その中で、文字式の学習をしていくうえで、とても特徴的な内容がありましたが、それがどんなことか分かるでしょうか?

いろいろな考えや意見があるとは思いますが、筆者は文字式の学習の中で最も特徴的だと考えているのものは、「式変形」をすることができる点です。

実際の計算内容や計算結果はどんな方法で進めても変わらないですが、文字式の学習においてはわざわざ分配法則ができるというルールまで紹介しています。

分配法則を学ぶと、文字式のところで学習せずに、算数からこの知識を学習してもいいもののようにも感じます。

なぜ、文字式の学習内容で、「式変形」が取り上げられているのでしょうか?

このページでは、文字式の学習において「式変形」が取り上げられている意味と、実際の具体例を紹介していきます。

 

式を変えるとどんなメリットがあるのか?

まず始めに式変形のメリットはどのようなものがあるのかを一緒に考えていきます。

① 計算がしやすくなる

もっとも思い当たる理由は「計算のしやすさ」だと思います。

文字式において、同じ種類の項をまとめることで、見た目もすっきりし、計算ミスが減ります。

 例
$3x+2x-5+4$
→ $5x-1$ に変形

このように同類項をまとめていくと、計算が簡単になり、間違いにくくなります。

② 式の意味がわかりやすくなる

もう少しこの式変形について考えていくと、文字式の「意味」を捉えやすくなるというメリットもあります。

何を求めているのかがはっきりとわかる形にすると、問題の解き方の見通しが良くなります。

 例
合計金額を出したいときに、商品の個数と1個あたりの値段をかけて表すなど。

③ 他の式と比べやすくなる

あとは、入試問題など難易度の高い問題を解くとき以外はあまり考えることはないですが、式同士の比較が容易になるというメリットもあります。

式を変形することで、他の式との共通点や違いが見つけやすくなり、比較や検討がしやすくなります。

このように、式変形は「よりよく使うための工夫」なのです。

 

実際の式変形の例

ここまでで、式変形のメリットを考えてきました。

ここからは、上記で説明したメリットを押さえながら、実際の式変形の例を紹介していきます。

①:計算しやすい形に変形する

まずは、最も基本的な式変形の例を見てみましょう。

例題

ある生徒が、数学で $x$ 点、英語で $x+10$ 点、理科で $x-5$ 点を取りました。3教科の合計点を文字式で表してみましょう。

 式
$x+(x+10)+(x-5)$

このままでは少し見にくいので、同類項をまとめます。

 変形後
$x+x+1+x-5=3x+5$

このように整理された式の方が、点数の合計がすぐにわかります。

例えば、$x=80$ なら、$3x+5=3×80+5=245$点とすぐに計算できます。

②:割合や平均など、目的に合う形にする

次に、割合や平均などを求めるときの式変形について見てみましょう。

例題

ある品物が $x$円で3個あるとき、1個あたりの値段を文字式で表しましょう。

 考え方
合計金額を個数で割ると、1個あたりの値段になります。式
$\frac{x}{3}$

このように、割り算の式で表した方が「1個分の値段」をすぐに読み取ることができます。

また、平均を求めるときも同様です。

 例題
合計点が $x$点で、5人の平均点を文字式で表すと?式
$\frac{x}{5}$

このように、「何を求めるか」に合わせて、式を変えることが大切です。

③:ある文字について整理し直す

式の中に複数の文字があるとき、特定の文字について整理することがあります。

 例題
「道のり = 速さ × 時間」という式があります。式
$d=vt$

この式を、速さ$v$を求めたいときはどうするでしょうか?

 変形後
$v=\frac{d}{t}$

また、時間$t$を求めたいときは?

 変形後
$t=\frac{d}{v}$

このように、求めたいものに応じて式を整理し直すことが必要です。

これは理科の公式にもよく出てきますし、生活の中でも「時間 = 距離 ÷ 速さ」と考えることがあるので、式変形の力がそのまま役立ちます。

④:問題の条件を読み取りやすい形にする

文章題や実際の場面では、条件をもとに式を立てることが多くあります。

例題

「りんごとみかんを合わせて$x$個買い、りんごはみかんより3個多かった」とします。みかんの個数を$y$個としたとき、りんごの個数はどう表せるでしょうか?

 考え方
りんごの方が3個多い → $y+3$
全体の個数は $x$ → $y+(y+3)=x$式
$2y+3=x$

この式を、みかんの個数$y$について整理したいときはどうしますか?

 変形後
$y=\frac{x-3}{2}$

このように、「知りたいもの」や「与えられた条件」に応じて、式を変形する必要が出てくるのです。

 

式変形のときに気をつけたいこと

上記では実際の式変形の例を使って、式変形のメリットを見ていきました。

ですが、式変形を行う際は注意しなければいけないこともあります。

式変形をするときの注意点を3つ見ていきましょう。

意味が変わらないようにすること

1つ目は、変形した式は、もとの式と同じ意味でなければいけないということです。

計算のルール(分配法則、加法・減法、乗法・除法)を正しく使い、変形後も変形前の数式の意味が変わらないように注意して変形していきましょう。

整理の順序を意識すること

2つ目は式変形の際の整理の順番に注意しましょう。

先に同類項をまとめてから代入する、割り算はできるだけ分数にして書くなど、見やすい順序で変形するとミスが減ります。

変形後の式が目的に合っているか確認すること

3つ目は、変形した結果、「求めたいものが表されているか」「簡単に代入や計算ができるか」を見直しましょう。

式変形の目的が、何を目的として行っているのかを理解せずに行うと、式変形もその後の数を代入した後の計算も間違えてしまいかねません。

式は「変える」ことがゴールではなく、「使いやすくする」ことが大切なのです。

 

まとめ

このページでは式変形の意味と式変形のメリットを紹介してきました。

式変形は、「式の形を工夫することで、より使いやすくする」技術です。

変形を正しく行えば、計算がしやすくなるだけでなく、情報を正しく読み取り、問題を効率よく解くことができます。

これは数学の基本的な力であり、理科・社会・家庭科などの教科、さらには買い物や移動時間の計算など、日常生活にもつながります。

今後、方程式や関数などを学ぶときにも、式変形はますます重要になります。

「なぜこの式に変えるのか?」という目的を意識して、練習していきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました