中学生の数学に入ってから文字式について様々な学習を行ってきました。
ここまで文字式について学習内容が多い理由は、数学を学習していくうえで、文字で表現するということがとても重要であるからです。
では、小学校の算数などは、具体的な数を使って問題を設定したり、実際に解答を作っていましたが、文字を使って表現する重要性とはどんなことがあるのでしょうか?
また、この学習単元では、文字を使って自分で数式を表現する学習もありますが、文字式を自分で表現する重要性とは何があるのでしょうか?
このページでは、これらの2つの重要性について、解説していきます。
数字だけでなく、文字を使う理由とは?
では、始めにそもそもなぜ「文字」を使って表現するのかを考えていきます。
たとえば、ノートを1冊120円で買うとします。
2冊なら240円、3冊なら360円……。
これは計算すればすぐにわかりますね。で
も、もし「何冊買ったときの金額も考えたい」となったら、どうでしょう?
このとき、「$x$冊買ったら、代金はいくらですか?」と聞かれて、毎回計算するのは大変です。
そこで、ノート1冊120円という条件をもとに、「$120x$円」と文字を使って式を表すことで、何冊買ってもすぐに金額がわかるようになります。
このように、文字を使うと、決まったルールや関係をまとめて表すことができるのです。
これは、数字だけではできなかった大きな進歩です。
「文字を用いた式で捉える」とはどういうことか
文字を使って表現する理由について、理解ができたら、実際にこの単元の学習内容でもある、文字式で捉えるとはどういうことかを考えていきます。
「捉える」というのは、ものごとのしくみや意味をつかむことです。
文字を使って式を立てることは、ある場面の計算のしくみや考え方を式で表して理解する、ということになります。
たとえば、友だちとお菓子を分け合う場面を考えてみましょう。
「1人に$a$個ずつ配るとして、$b$人に配ると全部で何個必要ですか?」
このようなとき、$a$と$b$に具体的な数字が入っていれば計算は簡単です。
でも、ここではわざと文字のままで考えます。
そうすると、「$a×b$個」という式で表すことができますね。
このとき、私たちは「1人に$a$個、$b$人に配る」という場面を「$a×b$」という文字式で捉えている、ということになります。
つまり、文字を用いた式で捉えるとは、「ものごとの関係や変化を、式を使って表すこと」なのです。
文字を使うことで、同じような場面をすばやく理解したり、別の人数や条件でもすぐに応用したりすることができるようになります。
「文字を用いた式で説明する」とはどういうことか
では次に、もう1つの学習内容の「説明する」とはどういうことか考えていきます。
たとえば、だれかに「どうしてこうなるの?」と聞かれたときに、式を使って答えることを考えてみましょう。
「リンゴを1個$x$円で買うとき、3個買うといくらになりますか?」と聞かれたら、次のように説明できます。
「1個が$x$円なので、3個で$x+x+x$となります。これをまとめると$3x$円です。」
このように、式を使って「なぜそうなるのか」を順番に説明することが、「文字を用いた式で説明する」ということです。
ただ答えを出すのではなく、「なぜそうなるのか」「どんな考え方をしたのか」を、文字と式を使って伝えることが大切です。
これは、数学の力だけでなく、人に自分の考えを伝える力にもつながります。
文字式を使って考える力を伸ばそう
中学2年で学ぶ文字式の計算は、これまでの文字式の学習よりも多くのことを覚えていきます。
たとえば「分配法則」や「項をまとめる」など、ルールがたくさんあります。
でも、それらは単なる暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を文字で考える力を育てるためのものです。
たとえば、「$a(b+c)=ab+ac$」という式は、最初は少しむずかしく感じるかもしれません。
でも、$a$個のものを$b$個と$c$個に分けて配る、という場面を考えれば、「$ab+ac$」に自然とつながることがわかります。
文字式は、数学を「計算の道具」から「考える道具」へと変えてくれるものです。
式を使って考えられるようになると、複雑な問題でも落ち着いて取り組めるようになりますし、自信もついてきます。
実際の生活でも文字式の考え方が役立つ
ここまでは勉強としての数学の考え方や重要性を説明してきましたが、ここでは日常生活においてもこれらの知識や考え方が有効になることを紹介していきます。
結論からお話すると、文字式の考え方は、学校のテストや問題集だけでなく、日常生活でも本当に役立ちます。
たとえば、コンビニでおにぎりを$x$円、ジュースを$y$円で買って、2つずつ買ったとします。
このとき、レジでいくらかかるかを考えると、「$2x+2y$円」という式で考えることができます。
また、家族で出かけるときにかかる交通費や食事代なども、人数や料金を文字で表すことで全体の費用を簡単に計算できます。
さらに、将来の仕事でもこの力は必要です。
たとえば、設計の仕事では長さや角度を文字で表して計算したり、プログラミングでは文字や数式を使って動作を説明したりします。
文字式で捉えて説明する力は、数学だけでなく「考える力」そのものなのです。
まとめ
このページでは、「文字を用いた式で捉えること」と「文字を用いた式で説明すること」について解説してきました。
数学の学習で文字を使うのは、ただむずかしくするためではありません。
文字を使うことで、より多くの場面に対応できたり、自分の考えをしっかり説明できたりするようになります。
イメージを掴むのが難しい、わからないときは、まず身の回りの例で考えてみましょう。
そして、そのしくみを式で表せるようになれば、それが「式で捉える力」、それを使って人に説明できれば「式で説明する力」になります。
数学は、難しい問題を解くだけの教科ではありません。
自分の考えを整理し、人に伝える力を育てる、とても大切な学びなのです。
これからも、文字式の学習を通して、「考える楽しさ」「わかるうれしさ」をたくさんはぐくんでいきましょう。
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