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■文字式の中の文字は正の数でも負の数でも当てはまる。
■文字式の中の文字は整数でも小数、分数でも当てはまる。
■文字式で使われる文字は、アルファベットでもギリシャ文字でも当てはまる。
中学生になって、ようやく数学の学習に慣れてきたと思った矢先に、いきなりアルファベットが教科書や問題集に出てきて焦ったという経験がある人は少なくないと思います。
数学の授業を行っているのに、先生の板書にはアルファベットがあって混乱するし、このアルファベットは一体何を表しているのか分からないし、一旦思考を停止しておこう。と筆者も初めて文字しきを学習した時は感じました。
それぐらい、この「文字式」という学習分野は、いきなり学習レベルが上がり、数学の苦手意識が生み出される分野になります。
ですが、この文字式もルールや条件をしっかりと把握しておくことで、そんなに特別なことを言っていないんだと理解することができます。
なので、ここでは文字式のルールや条件を説明していき、文字式の計算に入る前に知識を定着させていきたいと思います。
そもそも文字式とは?
文字式のルールや条件を説明していく前に、そもそも「文字式」とは何か?を説明していきます。
結論からお話すると、文字式とは「文字を使って表される式」を言います。
何も捻りもなくそのままではありますが、文字式の定義は複雑ではないので、その点はしっかりと押さえておきましょう。
そして、文字式は$x-4$や$2a+5$などのように、文字と数が合わさった状態のことを指すだけでなく、$x$や$a$などの文字単体でも文字式という点に注意しましょう。
なぜ文字単体でも文字式として扱うのかというと、文字単体を文字式と扱わないとした場合、文字式の計算がうまくできなくなってしまうからです。(これは今後学習を行っていく方程式などの分野で理解が深まる部分です。)
なので、文字式とは「文字を使って表される式」ということと、文字単体でも文字式ということの2点をしっかりと抑えた上で、学習を進めていきましょう。
なぜ文字式を扱うのか?
では、なぜ数学では文字式を扱っていくのでしょうか?
その答えは、より一般的な問題で数を扱っていくためです。
算数では例えば、「10kmの道のりを時速5kmで進んだ時にかかる時間は?」というような具体的な条件が設定されています。この条件では「10÷5=2だから2時間」と解答出来ますが、どんな時もこの条件で計算できるとは限らないですよね?
なので、文字式を使って、道のりのところを$x$、時速のところを$y$とおけば、かかる時間は$\frac{x}{y}$と表すことができ、その時の状況に合わせて、$x$と$y$に数を当てはめれば計算が出来るということです。
このように、文字式を利用するとどんな条件でも計算式を表すことができるため、例え複雑な条件でも計算を進めやすいというメリットがあります。
文字式で躓く人が多い理由
文字式の学習に入ると、途端に数学が苦手になる人が続出します。
その理由は大まかに以下の理由があるからです。
- 数学なのに英語の勉強をしているみたいに感じるため
- 文字を使うことによって、何を表しているのか分からないから
まず、学校の授業や教科書の中に、いきなりアルファベットやギリシャ文字が出てくると、「あれ?数学なのに数字が出てこないぞ?」と感じる人がいます。
実際に、筆者が塾の講師をしていた際に、ある生徒から「なんで数学なのに、英語みたいなことをしているの?」と聞かれたことがあります。数学の学習なので、本当に英語の授業を数学の時にしていたわけではありませんが、確かに生徒の立場になって考えてみると、初めて文字式に出会った生徒からすれば、数学なのに数字を使わないということが違和感に感じるのも無理ありません。
加えて、算数の時は具体的な条件の元問題を解いていましたが、上記でも述べたように数学では一般的な問題を扱うことになっていくため、問題の条件の抽象度が一気に上がります。
そうなると、文章中の文字が何を指しているのか分からなかったり、問題文自体が抽象的になっているために、そもそも何をしていけばいいのか分からないといった状態にもなります。
これらの理由のため、文字式で数学が苦手になる人が増えてしまいます。
このようにならないためにも、ここで学んでいる文字式の知識は早めに定着させる意味があります。
文字式で使われる文字
では、文字式ではどんな文字を使っていくのでしょうか?
算数の世界では、未知数や一般的な数を扱いたい時は●や▲などの記号を使って表していたと思いますが、文字式では「アルファベット」や「ギリシャ文字」を扱うケースが圧倒的に多いです。
厳密に言えば、上記の文字以外の文字を扱ってはいけないというルールはありませんが、筆者は少なくとも大学の物理の学習をしていた時ぐらいしか上記の文字以外の文字を使った計算には出会ったことがありません。
なので、基本的には「アルファベット」と「ギリシャ文字」を使って文字式を表すと考えていいでしょう。
よく使う文字一覧
以下では、数学でよく使う文字を示します。アルファベットは英語でも見慣れているとは思いますが、ギリシャ文字はどの文字どう読むのかぐらいは頭の隅に置いておくといいでしょう。
アルファベット
$a$ | $b$ | $x$ | $y$ |
$d$ (距離・判別式を表す場合あり) |
$e$ (自然対数を表す場合あり) |
$i$ (虚数を表す場合あり) |
$l$ (長さを表す場合あり) |
$r$ (半径を表す場合あり) |
$s$ (面積を表す場合あり) |
$v$ (体積を表す場合あり) |
2行目から一部補足の説明がありますが、ここでこの説明は理解しなくても大丈夫です。学習を進めていったときに、これはこの文字を使って表すんだなと思い出せれば問題ありません。
ギリシャ文字
$α$ (アルファ) |
$β$ (ベータ) |
$γ$ (ガンマ) |
$δ$ (デルタ) |
$ε$ (イプシロン) |
$ζ$ (ゼータ) |
$η$ (イータ) |
$θ$ (シータ) |
$ι$ (イオタ) |
$κ$ (カッパ) |
$λ$ (ラムダ) |
$μ$ (ミュー) |
$ν$ (ニュー) |
$ξ$ (クサイ) |
$ο$ (オミクロン) |
$π$ (パイ) |
$ρ$ (ロー) |
$σ$ (シグマ) |
$τ$ (タウ) |
$υ$ (ウプシロン) |
$φ$ (ファイ) |
$χ$ (カイ) |
$ψ$ (プサイ) |
$ω$ (オメガ) |
ギリシャ文字は高校に入ってからの方が目にする機会は増えますが、この中で特に中学から押さえておきたいのは、$π$(パイ)です。これは数学の世界では円周率を表す文字になります。
そして、今後円周率を計算するときは$π$を使うことがほとんどなので、これが何を意味する文字なのかはしっかりと押させるようにしましょう。
文字式のルールや条件
それでは最後に文字式のルールや条件について説明していきます。
文字に当てはまるものは最終的には数だから、特にルールなんて気にしなくても良くない?と思うかもしれませんが、数学の世界ではしっかりと一定のルールに則って文字式が記載されていきます。
ですが、ルールとは言ってもそんなに厳しいルールでも、多くのルールがあるわけではないので、ここで説明することはしっかりと覚えて実際に文字式と向き合う時には注意できるようにしましょう。
文字式のルール
乗法の記号「×」は省略する。
文字式では乗法の記号「×」は省略します。
例:2 × $x$ の場合は 2$x$ と書きます。
除法の記号「÷」は書かず、分数で表現する。
文字式では除法の記号「÷」は書かず、分数で表現するのが基本です。
例:3 ÷ $a$ の場合は $\frac{3}{a}$ と書きます。
1は省略する
文字式では、「1」を省略します。
例:1 × $a$ の場合は $a$ と書きます。
数と文字が混在しているときは数が優先
文字式の中で、数と文字の両方がある場合は、数から先に書きます。
例:-3 × $b$ の場合は $-3b$ と書きます。
複数の文字がある場合はアルファベット順
文字式の中で、複数種類の文字があるの場合は、アルファベット順に書きます。
例:$b$ × $a$ の場合は $ab$ と書きます。
同じ文字が複数ある時は指数を使う
文字式の中で、同じ文字が複数ある時は、指数を使って書きます。
例:3 × $a$ × $a$ の場合は $3a^2$ と書きます。
これらが基本的な文字式のルールになります。他にもアルファベットとギリシャ文字が混在している場合は?や加法や減法の記号がある時は?など疑問に感じる部分もあるかと思います。
ですが、ここで触れていない部分は、厳密にルールとして定まっているものはない(いわゆる慣習化している部分が多い)ので、教科書や学校で習った方法で身につけていって問題ありません。
まとめ
ここでは、文字式についての基本的なことをお伝えしてきました。
文章中でも述べましたが、文字式で数学が苦手になってしまう人は多くいます。そしてここで苦手になってしまった人は、この先も数学に対して苦手意識が残ってしまいます。
数学に限らずどの教科の勉強でも言えますが、何事も基本がとにかく大事です。
文字式では複雑なルールはありませんが、抽象度が一気に高くなる分野です。この分野に内容がすぐに理解できた人でも、しっかりと復習をして学習した知識を自分の知識として定着できるようにしていきましょう。
その先に、方程式や関数、図形問題などの様々な数学の問題が待っています。
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