数学を苦手と感じる人は多い
「数学」と聞くだけで苦手意識が湧いてくる学生や、数学だけに収まらず小学校で学習していた「算数」ですら苦手だったという人が多かった印象です。
筆者は学生時代、理系であったため特段苦手意識はありませんでしたが、中学生になって数学を勉強し始めた時から、「文字式の勉強は一体将来、どんな役に立つのだろうか?」と疑問に思いながら勉強していたことがありました。
その考え自体、学生生活が終わる直前まで無くならず、高校生の文理選択の際も、理科が小学校・中学校の時から好きだったからという理由と、高校入学の前に見ていたテレビドラマの影響を受けて理系を選択していました。
なので、筆者は学生時代は、数学が得意だったというわけではなく、さらに数学が好きだったというわけでもありませんでした。
むしろ「数学」という教科を勉強することにすら疑問を感じているほどでした。
そして、理系の学部に進んだ大学生の時ですら、周りの友人たちの中には、数学が苦手と感じる人もいました。また、筆者は学生時代に塾の講師のアルバイトをしていましたが、そこで受け持つ生徒さんも口を揃えて「数学が嫌い」「数学は苦手」と言っていました。
筆者の感覚も多く含まれていますが、数学が得意・好きと考えている人は非常に少ないように感じます。どちらかと言えば自分は文系だという人はもちろん、理系の人ですら苦手だったり、嫌いではないけど勉強したくないという人もいました。これは恐らく筆者の周りの人に限らず、多くの人が実感しうることではあると思います。
どうして多くの人が数学に対して苦手意識があるのでしょうか?次の項から、筆者なりにその原因を考えてまとめていきます。
数学の学習形式に原因あり?
数学を苦手に感じる人が多い原因について、まず「いつから苦手意識を持つようになったのか?」考える必要があると筆者は考えます。
科目名が変わる
日本の教育では、小学校までは「算数」、中学校からは「数学」と学習科目の名称が変わってしまいます。ここに1つ目の原因があると考えています。
数学以外の学習科目は小学校から中学校に進学するタイミングでは学習科目の名称は変わりません。ですが、数学だけが「算数」から「数学」に変わります。
名称は変わっていますが、実際は名称が変わるだけで、科目を通して学ぶこと自体は他の科目同様に小学校の学習範囲を発展させたものと大差はないように感じます。
ですが、科目の名称が変わってしまうことで、潜在的に新しいものを学ぶという意識をしてしまうことがある可能性が大いにあると考えます。
学習の抽象度が上がる
そして、さらに数学になると同時に、問題の条件の抽象度が非常に高くなるのも原因であると考えます。
どういうことかというと、例えば国語や社会などの科目は小論文や物語を読んで、読解していく学習や歴史上の事実を覚えていったり関連事項を結びつけて新しい歴史を学んでいきます。
この学習は基本的には小学校の時の学習の流れを継続して行っています。
ですが、数学になるといきなり「文字式」という抽象的なものの学習が始まります。
文字式は理解すれば何も難しく感じることはありませんが、数学の世界に初めて踏み込んだ中学生には「この$x$はいったいなんなんだ?」「ここの$a$は何を表しているのか?」と混乱してしまうのも無理はないと思います。
実際、小学校で学ぶ算数は、どんな問題でも具体的な数値(例えば道のりや時間でも何kmや何分などといった数値)が設定されています。ですが、数学の世界ではより一般的な事象に対して、論理的に問題を解決できるように、どんな条件でも問題が解けるように「文字式」という一般化されたツールを使って問題を解き進めていきます。
この学習における考え方の飛躍が、数学を苦手に感じさせてしまう可能性があるように思います。
積み上げ式の学習スタイル
そして3つ目の原因としては、数学は積み上げ式の学習スタイルであるという点です。
例えば国語であれば、「小論文」「小説・随筆」「古文」「漢文」など学習範囲を小学校から高校まで9年間かけて知識を増やしていく学習スタイルになっています。
ですが、数学については大前提として算数を理解していないと数学を理解することが難しいです。その前提をクリアした先に、数学の「方程式」や「関数」「図形」などの範囲の学習が始まります。しかし、これらの学習範囲も「方程式」の先には「二次方程式」、「関数」についても「一次関数」や「二次関数」、「図形」も「平面図形」や「空間図形」などどんどん知識を積み上げていかないと、太刀打ちできない状態になっていきます。
さらに、例えば中学一年生の段階で方程式の学習を終えるというわけではなく、学年を跨いで少しずつ学習のレベルを上げていくため、新しい学年に進んでも常に復習して知識を振り返った状態で新しい学習をしていくことが求められています。
しっかりと復習した上で新しい学習をするという形式は、学習という側面から見れば非常に大切な過程を経由しているので理にかなった学習形式ですが、数学を学ぶという側面から見れば、苦手・嫌いと感じる人が増えるのも納得できると思います。
苦手になる原因まとめ
上記の内容をまとめると以下のようになります。
- 科目名が変わる(無意識に新しい学習分野に置き換わっている)
- 学習の抽象度が上がる(具体的な条件での学習ではなくなる)
- 積み上げ式の学習スタイルになる(理解ができないと、新しい知識が積み上がらない)
このようなことが原因で数学は苦手になっていくと筆者は考えています。ですが逆に言えば、これら乗り越えた人は比較的数学に苦手意識はなく学習に取り組んでいる人がいるのではないでしょうか?
どんな学習でも同じことが言えますが、入り口でつまづくと知識が身につくまでに時間がかかります。しかし、数学は「数学」という学習分野自体の入り口でつまづく人がいるため、中学校3年間もしくは高校3年間で学習範囲の知識を身につけられず苦手になってしまうのではないかと考えます。
理解の速度や深さは人によって違うので、理解力を高めるのは個人の努力に依存してしまいますが、だからと言ってずっと数学を苦手のままにしておいてもいいとは筆者は思いません。できるのなら最低でも数学それ自体に苦手意識はないというレベルにはなっておくのが無難だと考えています。次の項からは数学に対する苦手意識をなくすメリットについて考えていきます。
数学の苦手意識をなくすメリット
上記のような3つの原因が数学を苦手と感じさせる大きな要因となっていると筆者は考えるわけですが、この苦手意識をなくすメリットは何があるのか?それを考えていきます。
メリット①:学習内容が分かる
まず1つ目ですが、今学習している部分の内容を理解できるということがあります。
学生さんにとってはこれが最もシンプルで効果の大きなメリットだと思います。どの教科・科目でも同様のことが言えますが、苦手・嫌いと感じる理由として多くの割合を占めるのが、「学習している内容が分からない」からです。
具体的な例を示すと、英語の学習をしていない人に対して洋画を見てもらっても、内容が理解できないのは想像に難くないでしょう。そういった人が映画の内容を楽しかった・面白かったと答えるでしょうか?
映画の場合は映像もあるので、もしかしたらそのように答える人もいるかもしれませんが、そう答える人も少ないと思われます。
そのように、内容が分からないものと向き合っていても、とにかく楽しくない・面白くないのです。人は自分が理解できる範疇のものなら楽しめることができ、面白いと感じることができますが、そのラインを超えてしまうと、理解できずに自分はこういった分野は好きじゃないかもしれないと思い込むようになり、抵抗感・拒否感が生まれます。
これが次第に定着していってしまい、最終的に自分はこの分野は苦手だ・嫌いだというところに帰着してしまいます。
メリット②:関連した知識を紐づけられる
そして2つ目のメリットとして、違う分野同士でも関連した知識を紐づけて応用することができるようになります。数学の学習はよく山登りに例えられますが、数学の問題は答えが決まっている問題に対して、様々なアプローチの仕方があります。
数学が得意・好きだと感じている人は比較的このアプローチの方法を複数通り持っていることが多いように感じます。
対して苦手・嫌いという人はアプローチの仕方が1つもしくは0という人が多いです。でもこの感覚はかなり理解がしやすいと思いませんか?目の前の山が自分の持っているツールやスキルでは登れないと判断すれば、山登りにトライすることもありませんし、そんな山がいくつもあれば、山登りをすること自体から遠ざかりたくもなります。
メリット③:数学を身近に感じるようになる
最後の3つ目のメリットは、より日常に数学を感じることができるようになります。数学が苦手・嫌いな人は以下のことを1回は言ったことがあるのではないでしょうか?
「これを勉強しても普段の生活では使わないし(普段の生活には困らないし)」
確かに中学校以上で学習をする数学という分野は日常生活を送る上で、絶対に身につけておかなければいけない知識というわけではないと感じるのは理解できる部分が多いです。ですが、それは普段気にならないだけで、非常に多くのことで数学に助けられていることがあります。
例えば、GPSの距離表示はどうやって計算されているのか?マンホールの蓋はなぜ丸いのか?など挙げればキリがありません。このような形で私たちが意識していない部分で数学はかなり身近にある存在なのです。
苦手意識をなくすメリットまとめ
上記で示した3つのメリットをまとめると以下のようになります。
- 学習内容が分かる
- 関連した知識を紐づけることができる
- 数学を身近に感じるようになれる
これらのメリットは最終的には数学が楽しい・好きとなる地点に繋がっていると考えています。筆者も今でこそ数学は楽しい・好きと感じるようになっていますが、学生時代はこういったことを考える暇もなく、日々勉強することだけに忙殺されていました。
もちろん自分の行きたい高校・大学にいくために、そのために勉強を頑張るという気持ちは大事ですが、本来自分がやりたくないこと・好きでもないことをやり続けるのは正直きついと感じることが多いです。
だからといって楽しく感じれるように・好きになれるように受験勉強を止めるのも少し違うかなと思います。
ですが、勉強を通して、少しでもこういったメリットが感じれるようになると段々と数学に対する苦手意識がなくなっていくと考えています。
まとめ
ここまで述べてきたように、数学は多くの人が苦手・嫌いと感じている分野になります。ですが、学生さんにとってはしっかり向き合わなければいけない学習分野でもありますし、全ての人にとっては日常生活の至る所に数学が活かされた技術があります。そういった側面から見てもこれから先も私たちの身の回りには数学が溢れてくことでしょう。
数学の理解を深めること・数学の問題ができるようになることはとても大事なことですが、まずは数学を好きになること・楽しく感じることから始めてみることをお勧めします。
そして、このサイトでは特に数学が苦手・嫌いと感じる人にも分かりやすく公式や定義、問題の解説をしていきます。1人でも数学に対する考え方や向き合い方が変わるお手伝いができるように少しずつ更新していきます。
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